<soul-03> 謎のバイト
チラシにあった第三倉庫は、明の予想よりもすぐに見つかった。
もうかなり古く重い閂扉を、ギギーっと錆びた金属音をさせながら力を目一杯入れて開けると、まずは中を覗き込む明。
倉庫の中は灯が何箇所か点いていて以外と明るかったが、何よりも目を引き明を驚かせたのは、生のバンドが上座の位置に揃って居て、持ち込んだらしい音楽機材や音響機器でサウンドチェックをしていた事だった。
本当のバンドが居た事実に、すっかり安心した明(あける)は、遠慮なくズンズンとバンドマン達の方へ向かいながら、胸の内ポケットからアルバイトのチラシを取り出して広げて掲げ、
「すみませーん?このチラシのバイトって、ここでいいんですかあ?
まだ募集してます?」
と、歩いてバンドマン達に向かっていた……はずの明は何かにぶつかった。
しかし………明の周りには何も無い。と言うより、倉庫にはバンドマン達しか居ないのだ。
「??………?」
状況が飲み込めず、思考を巡らせようと考えてはみるのだが、どうにも明解な見当が見つからない。
戸惑っている明をよそに、サウンドチェックに気を取られていて、やっと明に気付いた、例の皮ジャンの男性がドラムを調整していた手を止め・・
「!?君!!来てくれたんだ!?」
「はぁ………あの……………」
キョロキョロして、やはり何も無い事を確かめてから、明は、
「このチラシマジっすか?一晩で4万て」
男性は二階堂と言ったが、明がその名を知る事はついぞ無かった。
二階堂は驚きと喜びを隠さない声で、
「もちろんだ!!人数が合わないとかで、どうしても一人欲しいって言われてさ…とにかく君が来てくれて本当助かった!!」
「………ダンスって………具体的に何を」
と何かが明の肩にぶつかる。
どうせ気のせいかなにかなんだろうと、明らかな体の反応にも、明はもう頓着しない事に決め込んだ。
何よりも目前の4万にはあらがいがたい。
しかし、またもや何かにぶつかり、流石に明がしきりと首を傾げているのを見て取って、二階堂は、
「おばあちゃん?大丈夫なんですか?見えて無いみたいですよ?」
「?」
会話の意図も見えず相手も見えない明は、ひたすら困惑している。
二階堂は直も一人で話し続ける。
「………はあ…………はい………はぁ………でもやっぱり!
………はい!!わかってます!!わかってますってば!!君!!」
明は呼ばれている事よりも、不審そうに
「あの……何を喋って………」
明に構わず続ける二階堂。
「このバイトには、たった一つ条件があってね・・・」
【2008.4.20 Release】TO BE CONTINUED⇒