<soul-02> 星のキレイな夜
数日後、良く晴れた星のキレイな夜。
仕事を終えてからのバイト探しの帰り道、明(あける)は当に残金が百円を切り、落ち込んでいるかと思いきや、逆に半ばヤケになり鼻歌を歌って気を紛らわせながら、又あの倉庫街前の道を歩いていた。
この道も、時間は不規則だったが連夜通い続けていて、足取りは慣れたものになりつつあった。
明がふと気付くと、前方の街灯の下に先日の男性が、やはり皮ジャン姿でこちらには背を向けて立っている。
明の方は男性の事などキレイに忘れていたので、さして気にも留めずに歩いて通り過ぎようとした。
が、何だろうか、突然空気の塊の様なものにぶつかり、明は立ち止まらずにはいられなかった。
「???」
困惑して前方に手を伸ばしてみるが、そこには何も無い。
「?」
首を傾げながらも行こうとして、ふいに男性の姿が無い事に気付く明。
よく見ると、代わりに男性が立っていた街灯に、赤や緑、黄色で縁取られたド派手なチラシが支柱に貼ってある事に気付く。
近付いてチラシをよくよく見てみると、今の明にとって、この上ない歌い文句のチラシの文字が目に入って来る。
チラシの文には、
「アルバイト急募!!ダンスパートナー求む。
経験不問!!本日限り。場所、港町三番倉庫。
謝礼!!として4万円その場で現金支給。
時間、23時~遅くとも翌3時まで。男性のみ1名。
未経験者歓迎(誰にでもできる簡単なアルバイトです)」
明は思わず呟く。
「今日って……これから?胡散臭いなー………」
そう口では言いつつも、若干ニヤける自分を我慢できずに、丁寧にチラシを剥した。
と、後方で微かに男性老人の声が聞こえて来る。
「レッツ渡来」
「は!?」
驚いて振り返り、キョロキョロと辺りを見回す明だが、周りには誰も居らず、人の気配すらない。
不審に思い首を傾げるが、気にしてもしょうがないとタカをくくって、上着の内ポケットにチラシをたたんで突っ込むと、
「ヤバそうだったら逃げりゃいいか………」
そう呟き、倉庫街の方へ足を向けた明だったが、これから何が待ち構えているかは、もちろん知る由もない。
【2008.4.14 Release】TO BE CONTINUED⇒