<Dream-27> 押しかけ
それから数日が経った。
美頬は昼近くから、丸テーブルを出して、そこにお茶とお菓子を並べて、若干ブカブカの古い男物のTシャツとトレパン姿で、通販雑誌を読みながら、何かしなくてはいけない目的から解き放たれて、ゆったり休日を過ごしていた。
茶葉から煎れた、美頬特製アイスティーを飲みながら、ふと美頬は実多果を思い出す。
雑誌から顔を上げるとどこを見るでもなく視線を宙に投げかけて
「・・・本当の強さって
・・・あの子にもちゃんと備わってんのよねー
・・・あたしの場合愛情も何もないもんなー」
とダンっとアイスティーの大きなマググラスをテーブルに勢いに任せて置くと、大きく伸びをしながら、
「この能力置いてった彼女を問い正してみたいってだけだもんねー・・・ しかし・・・本当にあんのか!?魂の在り処!?
そして夢見なんかで見つかるもんなのか?
あー!!」
と独りごちて上で手を組んで伸びをしていると、玄関チャイムが鳴る。
しかし、普段チャイムは無視する方針の美頬は気にせず自分の世界に入ったままで、
「ま、サイドビジネスにしちゃ金がいいのよねー。やめられんわな」
と一人悦に入って又雑誌に目を移そうとしていると、いきなりガチャガチャがチャッと鍵を開けて
ドアを開ける音が玄関から聞こえて来る。
美頬は驚いて入口の方に顔を向けて
「!?何?」
瞬時に身構えた美頬は、何を思ったか、手早く上に乗っていた物を下にどけ、丸テーブルを担いで頭上に掲げ、武器の代わりに不審者にぶん投げて身を守ろうと、プルプル腕を震えさせながら必死にテーブルを担いでいると、入り口から入って来たのは、誰あろう実多果だった。
実多果ははにかみながら、大きな旅行バックを両手に提げて
「来ちゃった」
「ああ!?あんた!?・・何!?どうやって入っ・・」
美頬が思わず丸テーブルを前方にドサッと降ろすと、何事かとびっくりはしていても、気を取り直し悪びれもせずに実多果は
「最初会った時、渡された鍵もらっといた」
「ええ!?あ、そうだ・・そういや無いと・・」
美頬が気付く間もなく、実多果は自分の持ってきた大きなバックを部屋の隅に置いて荷ほどきを始める。
「今日から厄介になりに来ましたー。よろしくー」
「!?はあ!?何をほざいて!!」
「押しかけでーす。
お母さんに言ったらこう言うの押しかけ女房って言うって」
「だから!!何を言ってんの!?あんたは!!」
実多果は怯む様子も無く
「親にも許可もらって家賃半分出させて貰える事になったし・・・
何より!!」
「は!?」
【2020.8.15 Release】TO BE CONTINUED⇒
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