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Story&Illust by 森晶緒
“Star-Filled Sky” by 佑樹のMusic-Room
Site arranged by 葉羽

<Dream-26> 命

 川を見れずに、真っ直ぐ朝日の方に顔を向けている実多果は、まだ幾分涙がこぼれながらも

「……フグっ……開発とか………温暖化で……
 どうなっちゃうかわかんない……今のあたしには………夢過ぎるっ」

「そりゃそうだわ。先過ぎて夢物語だわね、あんたにとっちゃ……けど」

 地上を真っ直ぐ見つめる美頬の横顔が、真剣な表情を垣間見せる。

「だからこそ、普段の生活って……何て尊いんだろうね」

 眼に涙を溜めながらも、実多果はやっと気が付く。

 欄干にしっかり掴まりながら、恐る恐る目をつむり川の流れは見ない様にしながら、実多果が俯き、目を開けて下を見てみると、橋のコンクリートの上にも蟻がせっせと朝も早いうちから歩いている。

 そしてコンクリートの隙間からは、草花が凛と育って花を咲かせ、河原沿いの木々がザワザワと風に葉を鳴らす音が聞こえ、小鳥のさえずりや犬の鳴き声がどこからともなく聞こえて来る。

 実多果の意識が思わず、誰にともなく囁く。

『命が………』

 やっと片方の手を欄干から外し、もう一方の手を緩めると、欄干の柵の間から、顔いっぱいに朝日を浴びて、実多果の意識は気が付く。

『命で溢れてる』

 早朝の爽やかな空をさえずりながら羽ばたき飛んで行く小鳥を見上げながら、実多果は両手を顔の前で組むと、目をギュッとつむり、涙をこぼしながらも精一杯の気持ちで祈る。

「この幸せが………あいつに届きますように!!」

 その言葉に唖然として、祈る実多果を見下ろす美頬。

「………あんた、幸せなの?」

 そう漏らす驚きの言葉に、ブンブンッと無言で頷くのが精一杯の実多果に、美頬は手を頭に当てると、本心から一言

「参った」

 鼻をすすり上げながら、実多果が不思議がり、

「ズっ……何が?」

「いいのよ」

 穏やかに、少し幸せそうに川風に吹かれて微笑む美頬の横顔を見上げて、実多果は思う。

『この人は……誰の魂の在りかを探してるんだろう…………』

 朝日の光と共に、晴れ渡る空が、くっきりと鮮やかな青と真っ白な雲で形作られている。

『いつかは…この現実の中で、見付けられるのかな?』

 朝の河原の上空全景に、まるで男の子の後ろ姿が重なって見える様に思い出し、実多果は心で祈る。

『ごめんね。まだ涙は止まんないけど……
 あたしもちょっとずつでも……きっとあなたを見付けるから』

 空が光で満ち晴れ渡る。

「きっと………」

【2020.8.1 Release】TO BE CONTINUED⇒

 

 

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