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Story&Illust by 森晶緒
“Star-Filled Sky” by 佑樹のMusic-Room
Site arranged by 葉羽

<Dream-28> エピローグ

 唐突な事に泡を食っている美頬に構わず、バックからわざと物を出そうと屈んでゴソゴソさせながら実多果は

「あたしはミィさんの弱みを握っているー」

「ミィって何!?弱みなんか無いわ!!」

 怒鳴る美頬に、実多果はやっと荷ほどきの手を止めて美頬を見詰めると

「記憶探れるの、柿崎のおばさんに話して良かった?
 あっちゅう間におひれ?
 あれがついて商売できなくなると思うよ」

 一瞬だがギクッとする美頬は、歯ぎしりしながら

「人の善意を~~~」

 そう睨みつける美頬を意識的にしっかり無視して、実多果は荷物の中から、探していた物を取り出して、美頬の目の前にかざす。

 それは夢のお守りドリームキャッチャー。

「はい、これ」

 美頬は突き出されたドリームキャッチャーに瞬間怒っていたのも忘れて、眉間の皺はそのままに、怪訝な表情ながら思わず受け取る。手渡しながら実多果が

「いい夢掴めます様に。お守り」

「・・・・懐かしいー・・・ドリームキャッチャー・・・」

「ミィさんと居た方が『魂の在り処』見つけ易そうだと思って。
 それに、二人の方が心強いから」

「!?だからってあんた・・何無茶なっ・・・」

 反論しようとするが、何やら実多果が口をこわばらせているのを見て、言葉が途切れる美頬。

 実多果は、やっとやっと口を動かして、かなり無理にだが、何とか口の端を挙げて笑顔を見せる。

 実多果の笑顔はそれが初めてだと言う事を知っていた美頬は、その一つの不器用な微笑みの重きを感じ取っていた。

 精一杯の実多果の不器用な笑顔にしばし黙り込んで考えていたが、美頬の中で何かが変わったのか、単なる気まぐれか、覚悟を決めて大きな溜息を一つつくと、有り得ない言葉を口走っていた。

「ふーーーっ・・・・・家事あんた全部やんのよ。あと炊事も!」

 実多果は余りの驚きに顔が戻ると

「!!」

「後!!その『ミィさん』っての止めて!!
 どっかのおっさんじゃあるまいし」

 実多果は嬉しそうな瞳で

「いいじゃんミィさん。あたしは実多果でいいよ。
 知らない呼ばれ方されるよりそっちのがずっといい」

「だからね!あんたが良くてもこっちは・・・・・
 強過ぎんのも考えもんだわこれじゃ・・・・・」

 観念しながらも独り言でボヤき、頭を抱える美頬に、実多果は今度は本当に笑みがこぼれる。

 早速、ドリームキャッチャーを飾れと指図する美頬と、笑顔で応えようとする実多果の姿が、休日の小さな美頬の部屋の、広いリビングの中で賑わっていた

【実多果篇 完】

【2020.8.29 Release】Fin

 

 

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