<Dream-24> 嗚咽
欄干にしがみついたまま、実多果は泣くのを堪えても、涙が止めどなく流れるのに歯を食いしばり
「あたしは………通報しただけで………あたし…………
何なのか………何もできなかった……何も……気付きも……
気付きもしなかったの……何にも………ぐっ」
「………そっかな」
涙を流しながらも、泣く資格が無いかの様に、泣くのをまだ際で堪えて歯を食いしばる実多果に、美頬は
「どうして何もできなかったって、自分をくくるの?……
くくれないから、その男の子は最後に
あんたに会いたかったんじゃない?」
「………う゛……うううう゛………う゛…ううううううう」
欄干にしがみついて俯き、嗚咽する実多果。
「………」
美頬はそんな実多果に、ふっと息を漏らすと、朝一番の、まだ排気ガスに淀まない澄んだ川の空気を思いっきり吸い込みながら
「………理屈はいいわね……今まで溜まってた涙だから
……思う存分流していいよ」
美頬のその言葉に、抑えていた一線の堰が切れて、一気に実多果は喚き泣く。
「う……わああああ!!うわああああ!!」
涙をひたすら流して大声で泣く。
朝焼けの川に、実多果の渾身の泣き声がこだまする。
「うわああああああ!!」
良く晴れた早朝の空にまで響いて行く実多果の泣き声。
「ううわあーんんん!!」
しばし後、はっきりともう陽が昇って動き出す直前の景色を眺めて、思わず呟く美頬。
「キレー」
脇にうずくまって、泣き疲れてしゃくりあげている実多果に、美頬は朝日の方を眩しそうに眺めながら
「あんた……その男の子の事、すごい大事だったんでしょ?」
しゃくりあげている実多果は、気が付いてやっと涙と鼻水混じりの顔で美頬を見上げる。
「ものすごく大事……それだけは十分伝わって来たから」
「………何で……ひっ……っんくっ………何でわかっ……っつ」
しゃくりあげてやっと声に出す実多果に、フッと美頬は自嘲的に微笑むと
「……あたしはね、夢を入口にして……その人の記憶にも入り込めんのよ。
二度目の夢見の時、記憶の入口で泣いてるあんたが踏ん張ってた。
あんたは言ったわ……『あたしが見殺しにした』」
実多果は涙で鼻と目が熱くなる。
【2020.7.4 Release】TO BE CONTINUED⇒
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