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Story&Illust by 森晶緒
“Star-Filled Sky” by 佑樹のMusic-Room
Site arranged by 葉羽

<Dream-23> 投身

 到着して軽く息が上がる実多果の視線の先に、待っていた、先の男の子が顔は見えないが防波堤の端に立ち、実多果に声をかける。

「よう」

「な…何なのお?こんなとこにこんな時間……」

 男の子は沈黙して実多果の前に佇む。

 一方実多果はあらぬ想像に、走って来た顔が益々紅潮してくる。

「そんな事初めてだったから……あたしはドキドキしてた」

 だが、告白と肝に銘じて浮き足立つ実多果の心中にも、流石に質の違う重い沈黙に、いつもと違う変化をやっと気付いてキョトンとする実多果は、正直に顔に出ていたであろう戸惑いを隠せなかった。

 実多果の戸惑いに肩を押された様に、やっと男の子は口を開き

「………実多果に、見届けて欲しかったんだ………最後に会いたかった」

 何の事?

 そう実多果が口にする前に、きっと彼の 気持ちは決まっていたのだろう、星空をバックに一言男の子は、

「…………じゃあな……」

 そう発した次の瞬間、コマ切れの様に、男の子がその場から後退り海に落ちて行く様が、まるで映像の様に実多果の視界で起こり、後には実多果しかいない暗い波止場と、海の打ち付ける波の音だけが耳に痛いほど響いている。

 しばし何が起こったか理解できずに、固まって呆然としている実多果の姿だけがその場にあった。

 理解できないその映像が、少しずつ、実多果の中でつながりを持ち始める。

 切れていたスイッチが突然入った様に、急に意識を取り戻して、バッと波止場のコンクリートの際に這りついて、男の子が消えた海を実多果は必死に目を凝らして探しまわる。

 しかしそこには暗い夜の海の波しかない。

 打ち付ける波の音が、実多果に無情に大きく消えない響きを伝える。

「…………きゅ」

 弾かれる様にやっと反射的に現状を把握すると、殆ど無意識で夜の闇に走り出す実多果。

「救急車!!」

 闇に向かって全力疾走で走り続ける実多果。

 現在の橋の上では、止まる事の無い時が、朝焼けを又先程までとは違った色で鮮やかに空気と地上と空で輝かせている。

 その様子を見届けながら、今現在の実多果の傍らに居た美頬は、おもむろに口を開き

「柿崎さんから聞いたわ。
 死んだ事件は、はっきりしなかったけど、
 あんたが記憶失くした前後位に、
 近くの学校で生徒の自殺騒ぎがあったらしいって。
 詳細はその家族が引っ越してわからなかったそうだけど。
 あんたのお母さんが覚えてた」

 欄干の下のコンクリートに、実多果の涙がポタッと落ちて、グレーの染みになる。

【2020.6.20 Release】TO BE CONTINUED⇒

 

 

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