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Story&Illust by 森晶緒
“Star-Filled Sky” by 佑樹のMusic-Room
Site arranged by 葉羽

<Dream-20> 見えない人物

 布団を二組敷き、最初の夜と同様に、並んで美頬と実多果が布団の中で横になっていた。

 美頬の方は、既にスカーッと眠りに入っているが、最初と同様に美頬の額を自分の額に付けられた後の実多果はまだうとうとと眠れずにいた。

 もう当に、眠りにつくためのBGMも途絶えて、時計の針の音だけが微かに空間を支配する。

 実多果は、隣で眠る美頬の寝顔を伺って見る。

 美頬は何の悩みも困りごとも無さそうに、薄く口さえ開けて寝入っている。

 実多果はその何の問題も見いだせない寝顔に少し安心しながら、美頬に聞かれまいと
、もう一つ、この美頬の安心した眠りを妨げたくないので頭で独りごちる。

「この人一体……何が言いたかったんだろう………」

 時間なのか、安心したためか、それとも先ほどのハーブティーが想像以上にリラックス効果を発揮したのか、どうみても眠れないだろうと言う心境から遠のいて、段々実多果にとってのうとうとが、半分以上の眠りにすりかわってくる。

 途切れて行く意識の中、実多果はそれでも疑問に思いながら

「あたしがこたえるって………何の……………」

 そう思ったのか、それは既に無意識の域か、それすらも分からず実多果は眠りに落ちて行く。

 実多果の夢では、まるでどこか外国の街で、花がこぼれるほど溢れかえるパレードをしている人々と、花で飾りあげられた台車に乗って花を更にばらまくパレードの女王の様な美しいブロンドの白人女性が映ろって賑わっている。

 余りの華やかさに夢の中で感嘆の声を上げる実多果。

「わあっ」

 そのまま、その人々の花の列に参加しようとして視界が動く。

 歓声を上げて、実多果は花花に埋もれる様に前に進み出ようとする。

「あのね、あたしね!」

 そう解き放たれた様に叫ぶが、その瞬間、誰かに意識の腕の辺りをガッと掴まれ、グイグイとどこかに連れていかれてしまう。

 パレードはどんどん遠退き、辺りは気が付くと真っ暗になっても、まだその掴んだものはググーッと緩めることなく、実多果の夢の中の視界をより暗闇へと連れて行く。

 本当に真っ暗で、自分の意識の形も危ぶまれる暗闇まで沈んで行くと、それまで何の抵抗も見せなかった実多果の視界が、ピタリッと、それ以上動くのを拒絶する。

 実多果の意識は、もう形すら見えないが、確かに自分の腕を掴んでいたものを振り払う。

「いい……………そっちは見なくていい」

 声に発して頑なに拒むが、聞き覚えた声が暗闇のどこかから聞こえてくる。

「でもあそこに居るじゃない」

「…この声………確かあの人………居る?」

「ほら」

 ガッと実多果の意識の腕を暗闇から確実に掴むその声の主は美頬で、美頬は抗う実多果の意識をある方向に引っ張り向けさせる。

「見ないなら、せめて触ってあげなさい」

 と美頬の意識の手が、何故か黒い手に形造られ見えると、実多果の意識の暗黒の手を引っ張って、何かを手繰り寄せたかの様に、空間を越えたのか突如、ポッカリと薄暗がりの塊のものが現れる。

 そこへ向かおうとして、それが何なのか分からない筈なのに知っている実多果の意識が激しく抵抗しながら意識の限りに叫ぶ。

「や………やだ!!」

 瞬間実多果は夢の中で意識を失ったかと思う。

 しかし、心が痛む程の静寂の中、その薄暗がりのたった一つの塊から、すすり泣く声が実多果にも聞き取れて、意識を取り戻す。

【2020.6.6 Release】TO BE CONTINUED⇒

 

 

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