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Story&Illust by 森晶緒
“Star-Filled Sky” by 佑樹のMusic-Room
Site arranged by 葉羽

<Dream-19> 最後の夢見

 美頬の住むマンションの部屋への通路が続く。

 時間はもう深夜に差し掛かっている。

 美頬からの指定の時間は守れそうだが、この深夜に人の家へ訪問するのは、流石に気が引けた。

 しかし、そう見上げると、もう玄関前まで着いていて、『 平』の表札が目に入る。

 折り畳み式のテーブルを広げたラグの上に、実多果は戸惑って座っていた。

 実多果は立っている美頬に振り返り、正直に問うてみる。

「急にこんな遅く来いって……なんですか?こないだも変だったし………」

 美頬は煎れたハーブティーをお盆で運びながら誤魔化す様に軽く鼻で笑うと、実多果の前に温かで、でも熱すぎない今度は茶葉から正式な淹れ方で出したお茶を出してやるが、何も答えずに、実多果の疑問に関しては意に介さない様子でお茶を勧める。

「どうぞ。ハーブティーよ」

「はぁ………」

 とりあえず軽く会釈して、少しの緊張で乾いた喉をお茶をすすって落ち着かせようとするが、実多果はやはりこの呼び出しの真意が気になって、お茶のカップを早々にソーサーに戻すと、手持ちぶさたも何のその、美頬からの言葉を待ってしまう。

「…………」

 押し黙る実多果に、美頬は実多果を見ている様で、他の遠くも見る様に、囁きこぼす。

「……………三度目の」

「?」

 切り出されて、姿勢を正す実多果は、そうか、これが最後の『夢見』の用件だと改めて認識して、美頬を見詰める。

 美頬は、実多果の対面に腰を落ち着かせると、実多果の視線を感じつつも、余り問題では無さそうに、現実に返って来たかの声で、しっかりと切り出す。

「最後の夢見の前に……一つ質問を出すわね」

「………」

「…………あんた……夢見で何を得たいと思ってる?記憶?」

 そう改めて聞かれて、ハッとする実多果は、しかし、自分でも答えが見当たらずに、しどろもどろと

「…忘れたくて……忘れたんなら別に………
 戻りたい?って言うか……よく分からないし………」

 美頬はそんな実多果をじっと見詰める。

「………それでもあんたは来たわ。ここに……こうやって」

「それは………」

 答えに実多果が窮していると、じっと実多果を見ていた美頬の顔は、いつの間にか哀しみで満ちて行く。

 その美頬の表情に気づいた実多果は、思わず脳裏にパッと言葉が浮かぶ。

『………悲しい……顔………』

 それら全てを振り払う様に美頬は頭を横に軽く数回振り切ると、

「わかんないわよね………いいわ。
 あんたがどう応えるか…やるだけやってみるわ」

 美頬は心なしか、実多果に向かって力強く微笑んで見せる。

 その顔を見ても、美頬の言わんとする事が、到底把握できずに、不安そうに眼をしばたたかせる実多果。

【2020.5.23 Release】TO BE CONTINUED⇒

 

 

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