<Dream-09> 青空
「?」
呆然と美頬に向けて顔を上げる実多果に、美頬はそらんじるかの様に流暢に
「『自分がどうしたいかなんて聞かれたら、
今のあたしには答えられるんだろうか』」
実多果の夢の言葉をそのまま、まるっきり同じに美頬は言い当てた。
見たばかりの夢の台詞を覚えていた実多果は、思わずカアッと顔に血が昇る。
落ち着く間もなく続けざまに美頬は
「自分でどう応える・・・ か、考えてみるのもいいんじゃない?
ピンクレディーのミイちゃん・・・・・・・・・・・・・ !ほいじゃ」
そう言い置いて、慌ただしく玄関に向かい、部屋の玄関ドアを開けてせわしなく出かける音が後を追って聞こえて来るだけだった。
一人残された実多果は、驚愕の様子で座ったまま佇んでしまう。
「……………ほ……………本当に覗かれた!?」
天気の良い昼間の街路樹が、陽の光を浴びてキラキラと輝く中、フラフラと歩き実多果は家路についていた。余りのショックで輝く周りの様子も、今の実多果の目には入っていない。
柿崎の叔母から、『夢』を診てもらう……それだけは聞いていたが……まさか本当に夢を覗き見られるなどとは露程にも信じていなかった……見た夢の話でもして、占いの様に勝手に判断されるものと思っていたのだ。
あんな風に夢自体を見られるなんて………あの人って……どんな………呆然と歩いていた実多果は、ふと無意識でワンピースのポケットに手を突っ込むと、ポケットの中で何かがチャリっと音をさせて指に触る。
気が付いて実多果がその物を取り出してみると、それは預かった美頬の部屋の合鍵だった。
「あ………鍵持って来ちゃった………」
呆けて困りながらも、鍵を見付けた事で現実に引き戻された実多果は、ふいに良く晴れた青空を見上げる。
風も吹く中、遥か上空の光る白い雲は、流々と動き続けるが、その合間の青々と広がる空は、まるで何かを吸い取ってくれる程、どこまでも澄んで遠く、又近かった。
その空に魅入られながら実多果は自分に呟き問い掛けた。
「あたしの…………答え?」
【2020.3.14 Release】TO BE CONTINUED⇒
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