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Story&Illust by 森晶緒
“Star-Filled Sky” by 佑樹のMusic-Room
Site arranged by 葉羽

<Dream-07> 夢の中

 部屋の電気は点けっ放しで、光々とした明かりの下、眠れずに布団の中でまんじりともできずに実多果は居た。

 隣で既に寝ている美頬が居ては、声に出す勇気も無く心の中でひとりごちた。

『おやすみなさいって……眠れる訳ないじゃん………』

 実多果は仰向けにやっとやっと体を動かして姿勢を作ると、できる限り視界だけで部屋の様子を伺ってみた。

 都心近くにしてはヤケに静かで、コンポからのクラシックしか響いてはいない。

 防音設備がよっぽどいいのか?などとふと考えて金縛りの様な緊張が一瞬解けると、やはりどうしたらいいのか皆目分からない現状に、自分でも嫌気がさしながら、実多果は勇気をふり絞って隣で目をつむる美頬に声をかけてみた。

「あのー」

 しかし美頬はもう熟睡しているらしく、寝息を健やかにたててウィッグを被ったまま眠っていて反応しない。

 それを見てあらためて気が付き驚いた実多果は、呆れ返りながらもやはり声には出せず心の中でツッコミを入れる。

『もう寝てる!?しかもヅラ被ったまま!?』

 美頬の、実多果の通常の常識から逸脱した寝姿に、更に目がギンギンと冴えてしまい、どうにも眠れそうにない実多果はどうしようもなく、布団の首に被った縁を引っ掴み、

『こんな状況で眠れる訳ないじゃん!!』

 と聞き取れない程微かに呟いてボヤくと、又まんじりともできずに天井を見つめた。

 コンポから流れるたおやかなピアノの調べに交じって、壁かけ時計の針の音がかろうじて小さく時を刻む音を聞きながら、実多果の意識は思いとは裏腹に、段々遠のいて行く。

「寝られる訳…………」

 最後の言葉は呟きに変わって途切れた。

 深い闇の眠りの際で、ふと『ストレスがかかり過ぎると眠くなるよね』と実多果の意識のカケラが囁いて消えた。

 クラシックの旋律に満たされた部屋で、壁かけ時計は微かな音と共に時を刻む。

  × × ×

 実多果の視界は東京の街中をさ迷っていた。

 場所は銀座と池袋が交じった様な特定できない空間。

 しかし、気持ちは楽しい。遊びに来ているからだ。

 様々な街をぬうように視界は巡り、ショウウィンドウの中のガラスケースが手に取る程近く見える。

 そのガラス棚にはお洒落で可愛いスイーツなのか、色鮮やかなお菓子めいた物が所狭しと並べられてあり、見た目の鮮やかさから、それが食べられるのか手を伸ばそうと思うと、他のスイーツがカット割の様にめまぐるしく入れ替わって棚を通り過ぎて行く。

 やはり偽物なのか?と訝る実多果にダブルのスーツを来た老紳士の店主が現れ声をかける。

「どうなさいますか?どうなさりたいのでしょうか?」

 変わらず巡り続けるスイーツの彩りの世界の中で、実多果の視界と意識の人物が言葉を意識する。

「どうしよう……自分がどうしたいかなんて聞かれても………
 今のあたしには答えられるんだろうか……………」

 漠然としながらも思う。

  × × ×

 現実では時が飛んだ様に朝を迎えていた。

 もうコンポからは音は消え、雑踏と車の音が遠くでさざめく中で、壁かけ時計の針の音は、はっきりと刻む音を部屋に響かせている。

 閉じたカーテンの窓向こうから、小鳥の声も聞こえる。

 しかし朝の陽光と対照的な、昨夜より暗く感じる照明の明かりの下、昨晩と同様に美頬と実多果が二人並んで布団に眠っている。

 次の瞬間、ほぼ同時に、すうっと目を二人が醒ます。

 実多果は起き抜けで、まだ横になったまま、寝ぼけ眼でぼんやりしながらも、見慣れない部屋の天井に意識が混乱して、寝起きでこわ張る上半身をやっとやっと起こし上げて、まだ混濁した意識の中で、声に出して呟く。

「あれ?………ここ…………何?あたし………………」

【2020.2.29 Release】TO BE CONTINUED⇒

 

 

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