<Dream-06> 夢見屋
リビングに敷いた鮮やかな芝生の様なふかふかしたラグの上に、布団を二組敷きながら説明をする美頬に、ただただ部屋の端っこに身をできるだけ縮めて立ち尽くす実多果。
「要するに、あたしは相手の夢にシンクロできるんです」
こわ張った口を必死にやっと動かして、実多果は聞き返す。
「シ………シンクロっ?」
「そ。その人の脳波を捉える事で、
相手とまるっきり同じ夢を見れるんです」
そう言うと、やっと二組布団を敷き終わって、寝る準備に音楽コンポでクラシック音楽をかけ、寝た後で電源が切れる様にタイマーを手慣れた様子でセットする美頬。
美頬はあらためて部屋の隅っこの実多果に向き合うと、説明を続け
「あたしはただ、相手の夢にシンクロして覗き見るだけですから、
それを後で、夢見た内容を忘れてしまった本人に具体的に伝えて、
本人がそこから理由や意味を見出だすだけの話。
だから『夢見屋』って名乗ってるんです。
どうぞ、横になって」
と手を布団にスライドさせて実多果に布団に入るよう促す。
実多果はまだ信用できてはいなかったが、どうする事もできずに、促されるまま戸惑いつつも布団に入る。
美頬は補足で説明する。
「他の人が居ると、その人の夢まで拾っちゃうから。
だから二人にならないとダメって事で」
相変わらず口調は軽い。
実多果は布団の中で横になりながらも心の中では精一杯抵抗していた。
『どっからどう考えても……信じられない…』
戸惑い落ち着かない様子で布団に横になりながら、中でモゾモゾしている実多果に構わず、美頬はそっと実多果の頭の上からウィッグを若干垂らしても気にせずに、自分のおでこを実多果の額に一瞬だがくっつける。
実多果が面食らって驚いた表情をしているのを、やっと認めて美頬は
「今のであなたの脳波を拾ったの。
後は二人で眠れば、明日の朝には夢の内容は教えられます」
そう言うと、自分も布団に入り、まだまだ戸惑っている実多果の様子も慣れた調子で気に止めずに横になりながら
「『夢見』は3回まで。
それ以上は別料金になりますから。
おやすみなさい」
そのまま美頬は寝る姿勢を整えて目を閉じる。
取り残された様子で、呆然と布団に横になって、布団から出ている美頬の顔だけを、必死の思いで見つめる実多果。
【2020.2.29 Release】TO BE CONTINUED⇒
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