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「明るく楽しく上品に」(TAM Music Factory)
by 岸波(葉羽)【配信2008.5.21
 

◆この記事は作品のストーリーについて触れています。作品を実際に楽しむ前にストーリーを知りたくない方は閲覧をお控えください。

 こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。

 お前なんか、握ってやる!

 KinKi Kidsの堂本光一君がスシ職人に扮する「スシ王子」、今度はニューヨークへ行く~ということで観て参りました。

 「銀幕版」と名付けられたことから容易に分かるとおり、もともとは2007年に金曜ナイトドラマ枠で放送された全8話のテレビ・ドラマでした。

←(見たことはありませんでしたが・・。)岸波

 そして、映画版、ドラマ版ともに、演出はあの堤幸彦!

スシ王子

スシ王子・米寿司

(堂本光一)

(C)2008「スシ王子!」製作委員会

 堤幸彦と言えば、「金田一少年の事件簿」、「ケイゾク」、「池袋ウエストゲートパーク」、「TRICK」など、次々にヒット・ドラマを連発している時代の寵児。

 スタイリッシュな演出と独特な感性の笑いで全国の視聴者を魅了した人物です。

 ところでこの「銀幕版スシ王子!」は、テレビ版の前から映画化が決定していたとのことで、ドラマの放送開始前にクランクアップするという異例の展開。

 テレビ版の最終話は銀幕版に繋がる形でエンディングを迎えておりまして、両者はパッケージで企画されていたようです。

 さらに言えば、「テレビ版スシ王子!」はもともと「週刊ヤングサンデー」で連載されている漫画でして、こちらの原案も同じ堤幸彦でした。

 つまりこの三つは、最初からパッケージだった可能性もあります。

 さて、そんな「銀幕版スシ王子!」、その内容やいかに?

 

 堂本光一扮する主人公の米寿司(まいづ・つかさ)は、祖父が「スシ王」、父が「スシ男爵」と呼ばれた寿司一家の三代目。

 幼い頃から天才寿司少年として全国に名をとどろかせていたのですが、10歳の時、漁に出た三人を巨大カジキマグロが襲い、目の前で祖父と父を失ってしまうのです。

 これが大きなトラウマとなって、魚と目が合うと髪の毛が逆立って凶暴化する「ウオノメ症候群」(架空の病気)になってしまうことから、寿司の道を捨てて自然流(じねんりゅう)琉球唐手の師匠、武留守リリー(ぶるすリリー)のもとで修行に励んでいました。

スシ王子

スシ王子

(C)2008「スシ王子!」製作委員会

 やがて、自らの寿命を悟った師匠のリリーは、自然流免許皆伝の達人である「ティダ寿司」の店主に司を託し、司はそこで「寿司握りこそ拳の極意」と悟って寿司の道に舞い戻るのです。

 以後、「ティダ寿司」の見習い寿司職人であった河太郎((KAT-TUNの中丸雄一)とともに全国の港町を廻り、寿司対決を行いながら技を極めていきます。

 そしてドラマ版の最終話、実の弟との対決に勝利して全てを成し遂げた司に亡き師匠リリーから天の声が届きます。

 “シャリの達人がニューヨークにいる。マンハッタンへ飛べ”と・・・。

スシ王子

シャリの達人/俵源五郎

(北大路欣也)

(C)2008「スシ王子!」製作委員会

 唐手師匠の武留守リリーの名前は、もちろんブルース・リーのパクリ。

 ドラマでは、その高齢に似合わぬ華麗な拳の達人を平良とみが演じていましたが、魂のみの存在となった映画版では、“テレビで見たギャルになりたかった”という遺志を反映して、石原さとみ演ずる“ギャル師匠”の姿で登場します。

 この“ギャル師匠”はピンクのオーラに包まれていて、登場のたびにセクシー・ポーズをキメ、司が悩殺されていると、時おり元の師匠の姿に戻るという油断も隙も無い人物。(あはは!)

 スシ王子の司は、精神統一する時に、自然流唐手の「イリオモテ島のウミガメ!」という変なポーズをとったり、漢字が読めない(免許皆伝をメンキョミナデンと読んだり・・)などの性格設定。

 ドラマも映画も、そんな“小ネタ”が至るところに散りばめられているのですが、はっきり言ってスベリまくり。

 ところが、その“スベリまくり”でビミョーな笑いをとるという二重構造になっているのです。

スシ王子

八十八のメンバー

(北大路欣也・釈由美子)

(C)2008「スシ王子!」製作委員会

 さて、6ヶ月をかけてマンハッタンまでたどり着いた司が目にしたニューヨークの寿司事情は、ネタや握り方を含め日本の寿司とはほど遠いことにショックを受けます。

 しかし、3軒目にしてようやく見つけた“シャリの達人”源五郎(北大路欣也)の店「八十八(やそはち)」に入ってビックリ。

 というのも、日本の寿司修行で共に闘った弟分の河太郎(中丸雄一)が、既に弟子入りしてそこにいたからです。

 しかも河太郎には日本人留学生のナエという恋人もできていて、司に先輩風を吹かせるではありませんか。

 ところがこの「八十八」、以前はたいそうな賑わいをみせていたものの、イタリア・マフィアのぺペロンチーノ一味に嫌がらせを受け、少数の常連客が残るほかは閑古鳥が鳴いている有様。

 どうやら、ぺペロンチーノの陰で糸を引いてるのは、「ミスター・リン」と呼ばれる謎の寿司職人らしい・・・。

常連客の一人ハルキ

常連客の一人/ハルキ

(伊原剛志)

(C)2008「スシ王子!」製作委員会

 そんな状況の中、司の弟子入り志願を断った源五郎でしたが、やがて司の熱意に動かされて弟子入りを許可。

 すると今度は、河太郎の心中が穏やかではない。

 先に弟子入りしていた河太郎には立ち入りを許可されなかった秘蔵の田んぼに、司だけが連れて行かれ事で遂に河太郎は激怒。

 そんな嫉妬心をペペロンチーノ一味に付け込まれ、八十八を潰す悪だくみに加担することになってしまうのです。

 心の中では、日本での兄貴分である司に申し訳ないと感じながら、悪事に手を貸す河太郎・・。

 しかし、司が丹精込めて育て上げた幻のシャリの田んぼの水を一味が抜いて全滅させようとしたことで我に返り、それを阻止しようとして悲劇が訪れます・・・。

常連客の一人ハルキ

河太郎の彼女/ナエ

(太田莉菜)

(C)2008「スシ王子!」製作委員会

 一味の暴挙を止めようとした河太郎は、その場で袋叩きにあって刺されてしまうのです。

 一味が去った後、虫の息の河太郎は最後の力を振り絞って、自分の身体で水を堰きとめます。

 異変に気づいて、その場に駆けつける司。

 しかし河太郎は、最後に自分の本当の気持ちを司に伝えて謝罪すると、その場で息絶えてしまうのでした。

 ・・・うーん、何と言う悲劇。

 泣きましたよ、僕はこのシーンで。

 いや、唐突ではあるんですけどね。

 ここまでのコメディー進行は、いったい何だったのか・・・。

 ドラマ編での司と河太郎の深い絆を、こんなに簡単に終わらせていのか・・・。

 ともあれ、河太郎の気持ちに胸を打たれてしまったのです。

常連客の一人ハルキ

八十八の用心棒/稲子

(釈由美子)

(C)2008「スシ王子!」製作委員会

 さて、河太郎の死によって、さすがの源五郎も八十八の店じまいを決意。

 突如そこに現れた黒幕のミスター・リンは意外なことを言い出します。

 八十八の存続をかけて自分と寿司勝負をしろと。

 ただし、握るのは源五郎ではなく司!

 ・・・ま、このあたりも唐突な進行なので、理解に苦しみます。

 実はこのミスター・リンは、かつて三百年前に、沖縄で自然流と対抗して破れた一方の流派の後継者でした。

 それゆえ、自然流の後継者となった司を倒したいということのようですが、何故に寿司?

 何故にニューヨーク??

 うん、あまり深く考えない方がいいのかもしれません。

←(多分、答えは用意されていないと思うので。)岸波

 さて、三百年の因縁をかけたニューヨーク寿司対決の行方は?

 そして、八十八の、さらには司の運命やいかに?!

寿司対決

寿司対決

(C)2008「スシ王子!」製作委員会

岸波 ケイコ、どう思う、この映画?

これこそ日本の心よね!

岸波 え?! (いつも辛口なケイコにしては珍しい・・)

もー言うことのないデキだわ。

岸波 ふーむ。

もしかして、“光一君が出てればそれだけで”なんて、「どろろ」のようなオチでは?

違うわよ。あのお寿司よ。

岸波 そっちかい!

光一君の握ったお寿司のおいしそうな事と言ったら・・。

岸波 確かにネタがキラキラしてたもんね。

つまり、この映画の一番の殊勲者は・・

岸波 殊勲者は?

フード・コーディネイターね。(きっぱり)

岸波 ええー! (誰だったろう、フード・コーディネイターは・・??)

スシ王子

スシ王子

(堂本光一)

(C)2008「スシ王子!」製作委員会

 ともかくも、小ネタ・楽屋落ち満載のこの映画。

 どちらかというとマニアックな映画かもしれません。

 でも、最後の対決でミスター・リンを倒そうとする司が・・

 「お前なんか・・・お前なんか!」と言って周りを見回し・・・あ、河太郎がいない!

←(ここで「よっ!スシ王子!」と河太郎が言うのがドラマでのお約束。)岸波

 やむを得ず、河太郎のいつものポジションに行って自分で「よっ!スシ王子!」と言うシーンは、かなり面白かったです。

←(もちろんこの後は、もう一度自分の場所に戻って「握ってやる!」です。)岸波

 あまり肩肘張らずに、マンガのストーリーを実写で見る感覚で鑑賞すれば、かなり楽しめる映画でした。

 しかも、感動で泣いちゃったしなぁ・・・僕!

 

/// end of the “cinemaアラカルト59「銀幕版スシ王子!~ニューヨークへ行く~」”///

 

(追伸)

岸波

 4月末に、ニューヨークのウォルター・リード劇場でプレミア試写会が行われ、主演の堂本光一も参加しました。

「アイム・スシ・プリンス」と自己紹介した言葉に、会場のニューヨーカーから拍手喝采が巻き起こるなど、かなりの歓迎ムードであったようです。

 挨拶後、堂本は報道陣に・・・

「上から目線ではなく迎え入れてくれた。さすがエンターテインメントの街。見る前から(雰囲気を)楽しんでくれていて、それが伝わってきた」と感想を述べています。

 続けて「続編は?」と聞かれると・・・

「堤幸彦監督は天才。ついていけば間違いないと思っていますから、話があれば身を任せるだけ」と。

 しかしなぁ・・・だったら、河太郎をこのエピソードで殺さなければよかったのにと、心の中でつぶやいた僕でした。

←(言っちゃってるし。)岸波

 

 では、次回の“cinemaアラカルト”で・・・See you again !

スシ王子プレミア・トラック

スシ王子プレミア・トラック

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To be continued⇒  “cinemaアラカルト60” coming soon!

 

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