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「AUTUMN」(Music Material)
by 岸波(葉羽)【配信2005.11.13
 

◆この記事は作品のストーリーについて触れています。作品を実際に楽しむ前にストーリーを知りたくない方は閲覧をお控えください。

 こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。

 携帯もパソコンもTVもなかったのに、
どうしてあんなに楽しかったのだろう。

 今回、緊急配信です。

 最初に言っておきたいことがあります。

 この「ALWAYS 三丁目の夕日」は、僕がこれまでの見た映画の中で最も感動した映画になりました。

 この作品と出会えたことは、僕の人生の大切な宝物になるでしょう。

ALWAYS 三丁目の夕日

 そして、この映画に出演した俳優たちの誰もにとって、この作品は代表作になると思います。(きっぱり)

 つまり、そのくらい、これを読んだ貴方に、この映画を見て感動してもらいたいのです。

 

 物語の舞台は、東京タワーがまだ建設中だった昭和33年の東京の下町。

 パソコンも携帯もなかったこの時代、テレビさえも普及しておらず、人々は力道山の空手チョップを見るために街頭テレビの下に群がったものでした。

 主人公は、裸一貫で小さな自動車修理工場を興した鈴木オートの社長一家(従業員は本人と奥さんのみ)とその向かいで心ならずも駄菓子屋を営んでいる小説家志望の茶川龍之介(芥川にあらず)ほか、三丁目の面々です。

ヒロミと淳之介と龍之介

ヒロミと淳之介と龍之介

(左から)

 ある日、集団就職で鈴木オートに勤めるため、東北の中学校を卒業した六子(原作では男性の六さん)が上京してきます。

 一方、文学賞に落選続きの龍之介は、食べるために子供相手の駄菓子屋を営むかたわら「冒険少年」という雑誌に冒険小説を連載して生計を立てていますが、ある日、とんでもない居候を引き受けるハメになります。

 それというのも、密かに想いを寄せている赤提灯のオカミ「ヒロミ」さんから、昔のストリッパー仲間が結婚するのに子供の淳之介が邪魔になって預かり手を捜しているという相談を受けたからです。

 この両家の出来事を軸に、誰もが貧しく、それでも一生懸命助け合って生きていた昭和30年代の下町の風景が浮き彫りにされていくのです。

六子(むつこ)

六子(むつこ)

(堀北真希)

 でも、ノスタルジーだけの映画ではありません。

 登場人物たちは、それぞれ人に言えない悩みを抱えているからです。

 六子は、自分が“口減らし”のために下働きに出されたことを知っていましたが、決して実家には迷惑をかけられない、二度と故郷に帰ることはできないと考えています。

 赤提灯のヒロミが、自分で友達の子供淳之介を引き受けられない本当の理由は、入院中の実家の父の高額な治療費を負担するために、間もなく“身売り”をしなくてはならないからでした。

 さらに、これまで親戚の家をたらい回しにされて来た淳之介は、一目、本当の母親に会いたいと考えています。

 そんなある日、淳之介の後を付回す黒い影が・・・また、淳之介と鈴木オートの息子一平は揃って行方不明になって・・・。

吉行淳之介

吉行淳之介

(須賀健太)

 監督は山崎貴、出演は、茶川龍之介に吉岡秀隆、鈴木オート社長に堤真一、その妻に薬師丸ひろ子、ヒロミ役を小雪が演じていますが、みな恐ろしいほど役柄がハマっています。

 ヒロミ役の小雪は、あまり印象のなかった女優さんでしたが、この映画を見てかなり印象が変わりました。“目”で演技が出来る素晴らしい役者さんだったのですね。

 そして、涙を絞る二人の名子役、吉行淳之介役には須賀健太くん、鈴木一平役に小清水一揮くんです。

 この須賀健太くんは、ちょっと可哀そうな子供を演じたら、右に出るものがいないのではないでしょうか。

 映画のラスト近く、実の父親(川渕康成)から逃げ出してきた彼が茶川の前で見せる無言の演技は、もうこれは反則ワザです。

 このシーンで泣かない人がいたとしたら、もう人間をやめた方がいいと思います。(笑)

 茶川龍之介役の吉岡秀隆の熱演も凄いです。

 やさおとこでどう見ても頼りない茶川が、ここ一番で見せる男らしさに、貴方の涙腺はもはや修復不能の状態になるでしょう。(きっぱり)

 そして、田舎娘六子役の堀北真希も好演です。

 薬師丸ひろ子は、この映画でやっと本当の演技派女優になれたと思います!

 三浦友和に、こんなはまり役を与えた素晴らしい目利きは誰だったのでしょう!・・・はぁはぁ、思わず力が入ってしまいました。大変、失礼をいたしました。

広場で遊ぶシーン

広場で遊ぶシーン

←フラフープ!

 この映画の原作は、ビッグオリジナルに長期連載されている西岸良平の「夕焼けの歌・三丁目の夕日」ですが、西岸氏にとってのライフワークと呼べる作品です。

 毎回、懐かしい昭和30年代の風物を取り上げながら、コミック単行本で既に45巻にもなる心温まるエピソードを30年以上にわたって描いてきました。

 僕の思うところ、鈴木オートの小学生の息子である鈴木一平くんは、西岸氏の分身ではないかと思います。

 1947年生まれと言いますから、昭和30年代は、まさに氏が子供だった頃。

 誰にもまねの出来ないこういうテーマの作品を書き続け、しかも30年以上も支持され続けているということは大変なことだと思います。

 そして、そこに綴られた短編エピソードを原作に忠実に、しかも筋のとおった人間ドラマに再構成したシナリオも見事という他はありません。

 さらに、この映画のもう一つの見所は、映画の中に登場する昭和30年代の東京の風景や街並みです。

 精緻なSFXは、ハリウッドとは全く別のJAPANオリジナルと言っていいでしょう。

 それは、ワイヤーアクションもなければ宇宙戦争もありませんが、自然なストーリーの中で決して出しゃばらず、それでいて非常に完成度が高いものです。

 (だってアナタ、昭和30年代の東京を丸ごと再現してしまったのですよ!)

 また、当時の看板やら何やら、いったいどうやって集めてきたものか・・・?

駄菓子屋

駄菓子屋

(龍之介の店)

←看板まで芸が細かい!

 11月5日の封切り以来、この「ALWAYS 三丁目の夕日」は、ぶっちぎりのトップを独走しています。

 そして、その中心となっているのは、これまでのヒット映画の常識を覆して40代だそうです。

 この映画は、宮崎アニメに続き、洋画に押されっぱなしだった日本映画の新しい可能性を拓く金字塔になるのではないでしょうか。

 秋は・・・・やっぱり泣ける映画がいいですね。(うっうっ・・)

 

/// end of the “cinemaアラカルト21「ALWAYS 三丁目の夕日」” ///

 

(追伸)

岸波

 泣きました。

 涙がかれるまで泣きました。

 しかも、「タイタニック」のような悲しみではありません。

 「冬ソナ」のような恋の切なさでもありません。

 こんなにも優しい人の思いやりが心を泣かせるのです。

 さあ、貴方も・・・。

 

 では、次回の“cinemaアラカルト”で・・・See you again !

ALWAYS 三丁目の夕日'64

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To be continued⇒  “cinemaアラカルト22” coming soon!

 

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