「windblue」 by MIDIBOX


23月10日火曜日14j時から初台の新国立劇場でモーツァルトのオペラ「ドン・ジョヴァンニ」を見た。

 5日間公演の4日目。平日のマチネだというのにほぼ満員の盛況だ。モーツァルトの4大オペラは人気があるようだ。

「コジ・ファン・トゥッテ」はやはりその中でも知名度はいまひとつだろうから、「フィガロの結婚」「魔笛」「ドン・ジョヴァンニ」ではどれが一番人気があるのかしら。

 たぶん「女たらし」「プレーボーイ」「放蕩もの」などという不道徳性が敬遠されて「ドン・ジョヴァンニ」は第3位だと思う。女好き領主を懲らしめる「フィガロの結婚」は2位、メルヘンチックな「魔笛」が第1位だと思う。

 それはともかく今回の新国立劇場の「ドン・ジョバンニ」は大満足の公演だった。

 まず主役のドン・ジョヴァンニのヴィート・プリアンテがまさにハマリ役。歌も演技も唖然とするような出来栄え。その従者レポレッロ役のフランチェスコ・レオーネも負けず劣らずの芸達者。さらにこの2人に翻弄されるドンナ・アンナ役のイリナ・ルング、エルヴィラ役のサラ・コルトレツィスの2人は歌唱ばかりでなく花もある存在で楽しめた。

 

 やはりドン・ジョバンニに誘惑される村の女役は盛田麻央。外人勢に対して一歩も引かない見事な歌唱だった。ただ完全な姉さん女房の雰囲気でもう少し若やいだツェルリーナが見たかったかな。

 そして特筆すべきは飯森範親(いいもり・のりちか、1963年5月17年鎌倉市生まれ62歳)指揮東京交響楽団の演奏。公演4日目ということもあるのだろうが、まさに歌手に寄り添った伴奏で歌手は実に歌い易そう。

  飯森範親

 飯森はさほどオペラ指揮の経験はないと思うが、新国立劇場ではすでに「鹿鳴館」(池辺晋一郎)、「夏の夜の夢」(ブリテン)、「コシ・ファン・トゥッテ」(モーツァルト)、「蝶々夫人」(プッチーニ)を指揮している。

 まずオーケストラの鳴らし方が上手いのだ。フォルテが濁らず響きが美しい。テンポ設定が上手い。しかし円満具足な安全運転をしているわけではなく、思わぬパートが聞こえて「ほう、そう来たか」と思わせるような面白味にも事欠かない。

 今回飯森の提案で通奏低音をチェンバロ(小埜寺美樹)だけでなく、チェロ(懸田貴嗣)も加えたという。これが時にチェロ協奏曲かと聞こえてしまうような場面もあり実に面白かった。

 余談だがTVドラマ「のだめカンタービレ」の指揮演技指導を行い、映画「おくりびと」(2008年 滝田洋二郎監督 第81回アカデミー賞外国映画賞受賞)では主人公(本木雅弘)のチェロ奏者が所属した東京のオーケストラでの演奏会シーンで指揮者として登場し、ベートーヴェンの「第九」の第4楽章を指揮した。

 今回の演奏時間(全2幕)は午後2時開演の場合、第1幕1時間35分、休憩25分、第2幕1時間25分で午後5時25分終演というスケジュールになっている。

 

 この「ドン・ジョヴァンニ」というオペラは、他のモーツァルトのオペラに比べてもいわゆる名アリアが多くちりばめられている。特に登場人物の説明を第1幕で済ませているので、第2幕はドン・ジョヴァンニの地獄落ちまではアリア合戦みたいな趣きもあるほどだ。

 こういうことを書くとモーツァルト信奉者から怒られそうだが、この「ドン・ジョヴァンニ」の第2幕は「フィガロの結婚」や「魔笛」に比べると、ドラマとしては意外な展開がなくてやや停滞していると思う。

 逆に言えばモーツァルトの名アリアや重唱が心行くまで楽しめるとも言えるのだが。そうした意味では今回の声楽陣の充実は素晴らしかった。

(20260.3.20「岸波通信」配信 by 三浦彰 &葉羽

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