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昨年後半から、海外でも日本でも、人造ダイヤモンドの販売がいよいよ始まったというニュースが相次いでいる。

 呼び名もさまざまで、ラボ・グロウン・ダイヤモンドやエコ・ダイヤモンドやサステナブル・ダイヤモンドと呼ばれたりもしている。

デ・ビアスの人造ダイヤ

 ここ数年で、人造ダイヤの製造技術が飛躍的に進歩して、やっとコストが天然ダイヤのコストを下回るようになり、さらに最近そのコストダウンが著しく下がって、加えてクオリティーもアップ。

 専門の鑑定家でも、判定が難しくなるほどだ。高額の判別機による判定が必要になっているという。

デ・ビアスの「ライトボックス・ジュエリー」

 一番、衝撃的だったのは、世界のダイヤモンド流通の30%を支配すると言われる採掘・流通・加工・卸しのデ・ビアスが人造ダイヤモンド「ライトボックス・ジュエリー」の販売を9月にUSAにおいて専用サイトで開始したことだ。

 「天然ダイヤと人造ダイヤは全く異なるもの」というのがデ・ビアスの論理だが、米国、ロシア、中国などのメーカーが量産化をめぐってシノギを削っており、もはや傍観することができなくなったというのが実情のようだ。

 1カラットで800ドル(8万8000円)程度で、ふつうの婚約指輪に使われる天然ダイヤの十分の一程度の価格だという。

 デ・ビアスではこの人造ダイヤで新市場が開拓できるとしている。例えば、学生のパーティや娘のピアノの発表会にこの人造ダイヤが活躍しそうである。

 そもそも、天然ダイヤが「永遠の愛の象徴」「ステータスシンボル」というイメージを人々に植え付けたのは、デ・ビアスのマーケティングの結果だと言われている。

 ラブロマンス映画にダイヤモンドを登場させたり、英国王室への献上など徹底したイメージ戦略が繰り広げられた結果、炭素原子が高熱で圧縮されて出来ただけのダイヤモンドは宝石の最高峰というイメージを付与された。

 しかし、コスパ世代の台頭する現代では、そのマーケティングの魔法が通じない若者が現れつつある。コスパ世代の彼らが安さに引かれて、婚約指輪は人造ダイヤでもいいと考えても不思議ではない。

 さらに天然ダイヤ採掘時の深い掘削は環境破壊につながるし、過酷な採掘作業は労働者を蝕んでいる。加えて映画「ブラッド ダイヤモンド」(2006年)で描かれたように、天然ダイヤは政情不安地域での武装勢力の資金源になっている。

 それに対して、人造ダイヤはエコであり、サステナブルであり、トレーサビリティが高いというイメージがある。これも若い層に支持される要因になりうるだろう。

東武百貨店のダイヤモンドファウンドリー製人造ダイヤ

 日本では、池袋の東武百貨店が昨年12月から、ダイヤモンド専門店アフリカダイヤモンズがダイヤモンドファウンドリー社(本社)の人造ダイヤモンドの販売を始めている。

 ダイヤモンドファウンドリーはシリコンバレーに本社を置く大手人造ダイヤモンドのメーカーだ。

 アフリカダイヤモンズはやはりダイヤモンドファウンドリー社の人造ダイヤモンドを六本木ヒルズでも販売している。

 ちなみに購買すれば、ダイヤモンドファウンドリー社によるシリアルナンバー入り鑑定書がつく。ダイヤモンドのクオリティによるが、大体天然ダイヤモンドの半値。

 婚約指輪で、天然ダイヤモンドが60万円なら、人造ダイヤモンドで30万円程度という感じだという。

 やはり京都のジュエリーの製販一貫企業である今与は昨年10月1日に人造ダイヤモンドを「SHINCA」のブランド名で発売した。

 これもダイヤモンドファウンドリー社のダイヤモンドを加工した商品でリング、ネックレス、ピアスがそれぞれ7型。今与の御池(おいけ)店のほか、SHINCAオンラインショップでも発売される。価格は5万4000円~。

 人造ダイヤモンドについては、今後さらに技術革新が進み、コストダウンが図られるのは確実だ。特に中国が開発競争に本腰を入れており、そのコストダウンのスピードアップが予想される。

 ダイヤモンド市場に新時代が訪れそうだ。

                

(2019.4.24「岸波通信」配信 by 葉羽&三浦彰)

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