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今放送中のNHKの朝ドラこと連続テレビ小説「べっぴんさん」は子供服メーカー、ファミリアの創業者、坂野惇子(ばんのあつこ、1918-2005)の一生を描いたものだ。

 この坂野惇子さんに会ったことがある。

 実に品の良いおばあちゃんだった。

NHK「べっぴんさん」

 坂野通夫さんと結婚する前の名前は、佐々木惇子で、レナウンの創業者である佐々木八十八の三女として神戸に生まれている。

 レナウンは、創業時は佐々木営業部というちょっと変わった社名だった。

 惇子さんの夫でファミリアの社長だった坂野通夫さんも佐々木営業部の社員だったから、資本関係はないがある意味ではファミリアはレナウンの関連会社みたいなものだった。

 淡いピンクとブルーのシャーベットカラーがキーカラーになったファミリアの子供服はいかにも神戸生まれのお上品な子供服として一世を風靡したものだった。

    

 私がWWDジャパンの編集部に加わったのは1982年だったが、最初に担当したのは子供服業界だったので、よく覚えているが、1970年代の日本の子供服業界では「チャイルド」「ピノチオ」「白樺」が3大ブランドと言われていた。

 ブランド名からして分かるが、実にのどかな時代だったから、たちまちファミちゃんとリアちゃんがキャラクターになった神戸発のファミリアは子供服業界のスターにのし上がった。

ファミちゃんとリアちゃん

 しかし、80年代に入り、日本の子供服業界の「台風の目」になったのが大阪は八尾に誕生した三起商行による子供服ブランド「ミキハウス」だった。

 赤と緑のドギツイコントラストカラーで一気に子供服のリーディングカンパニーになった。

 日本中の子供服売り場がレッド&グリーンの「ミキハウス」に占領されたのだが、先駆的なSPA(製造・販売一体型のブランド企業)業態だったこと成功の一因だった。

 ちなみに80年代に「ミキハウス」と並んで子供服市場を席捲したのは神戸のジャヴァ・グループのブランド「ベベ」だった。

    

 NHKの朝ドラで、この「べっぴんさん」の前は「とと姉ちゃん」。主人公は「暮らしの手帖」と覚しき出版社に勤めていた。

 この普通の髪型の編集長がオカッパ頭で有名な花森安治(1911~1978)なのかなと思って観ていたが、まあ「とと姉ちゃん」もファッション関連朝ドラと言えるかもしれない。

NHK「とと姉ちゃん」

ファッションもののNHK朝ドラと言えばこれは「カーネーション」(2011年下半期)にトドメをさす。

 コシノヒロコ、コシノジュンコ、コシノミチコの三姉妹を育てた母、小篠綾子(1913~2006)を描いていた。この主な舞台になるコシノ洋装店があったのは、大阪でガラの悪さでは八尾市と並ぶ岸和田市だ。

 三姉妹の中ではコシノヒロコさん通称ヒロコ先生とはよくお会いするが、歌も絵も三味線も、とにかく何をやってもプロはだしの人である。

「もしデザイナーにならなかったら、何になりますか?」と尋ねたら「女優」と即答した。

 なるほど、である。たぶん上沼恵美子風ではないだろうか(笑)。

NHK「とと姉ちゃん」

 私は政治家になって欲しかった。この押しの強さと岸和田女子の激しさで大阪を変えていただきたかった。

 ヒロコ先生は、最近、(株)ヒロココシノ社の社長を長女の由佳さんに譲って、会長に退いた。

 来年1月には80歳の声を聞こうとしているが、社長の重責を解かれたためか創作活動と趣味においてはますます盛んである。

 9月27日には新橋演舞場で開かれた銀座くらま会に登場。長唄「勧進帳」で三味線を披露した。

(※右の背景画像:ヒロコくらま会近景)⇒

 この会は銀座の旦那衆が手習い事を披露するお遊びの会ではあるのだが、ヒロコ先生(杵屋勝禄女)だけはちょっとばかり様相が異なり完全に真剣勝負なのだった。

ヒロコくらま会遠景

 実はヒロコ先生、14歳の時に杵屋和賀義氏に師事し三味線を始めていた。

 母親の綾子さんが仕事で忙しかったために三姉妹にそれぞれ13だか14だかの習い事をさせていたのだそうだ。

 ヒロコ先生もそのうち長く続いた習い事は三味線などごくわずかで、23歳の時にはファッションの仕事が忙しくなりその三味線も中断していた。

 その後2004年から杵屋勝禄に再入門し名取になり、14年11月には杵屋勝禄女を襲名している。

 今回は実に65年の修業の成果を見せていただいたことになるが、いやはや、実に見事な三味線であった。

                

(2016.11.11「岸波通信」配信 by 葉羽&三浦彰)

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