「windblue」 by MIDIBOX


青山通り(国道246号線)から明治通りを横切り、明治神宮に至るまでの1kmほどの大通りは表参道と呼ばれ、ケヤキ並木と数多くラグジュアリー・ブランドが旗艦店を構えていることで有名だ。

 表参道とは逆方向に先程の交差点から根津美術館までに至る500メートルほどの通りは、御幸(みゆき)通りと呼ばれる。

 根津美術館の手前にはフロムファーストと呼ばれる青山では最古のファッションビルがあるので、御幸通りはフロムファースト通りと呼ばれることも多い。

 この御幸通りに今年の3月と5月に2つの路面店がオープンして話題になっている。

ミュウミュウ青山店

 ひとつは3月28日にオープンした「ミュウミュウ」旗艦店である。2階建てだが実に変わった外観なので、通りを行く人々の注目を集めている。

 設計は、ジャック・ヘルツォークとピエール・ド・ムーロンのスイス人2人の建築家ユニットである。

 建設のコンセプトは、「まさに宝石箱を開けようとする時の期待に満ちた気持ち」だという。なるほど、これから「ミュウミュウ」のブティックでお買い物をしようとする時のワクワクした気持ちが見事に表現されている。

 この2人組建築家ユニットは、この店の向かいにある2003年5月に完成した「プラダ」青山店の設計もしている。「プラダ」も「ミュウミュウ」も同じプラダ社に属するブランドだ。

 こちらの「プラダ」青山店は地下2階・地上7階で「氷山」をコンセプトに、特注の菱形の特殊ガラスを組み合わせた建物だ。

 初めて見た者を必ず驚かせると言ってもいい独特な偉容を誇っている。世界のブティック建築でも1、2を争う傑作だろう。

ジャック・ヘルツォーク&ピエール・ド・ムーロン

(※ 北京国家体育場“鳥の巣”も二人の設計)

 MOMA新館などを手掛けた世界的な建築家の谷口吉生(たにぐちよしお)氏は表参道と御幸通りに立ち並ぶ一連のブティックについて「建築の動物園だ」と皮肉めいて述べている。

 過去の歴史的建造物に配慮した建築を義務付けられているパリやミラノと違って、東京にはそうした自由な建築が許されている。

 もともと、「ミュウミュウ」はこの御幸通りを一本入った場所にブティックを構えていた(1999年オープン。設計はロベルト・バチョッキ)のだが、高額の家賃を噂される表通りの御幸通り沿いに今回移転オープンした。

 表通りに出て来たからと言って、売り上げが大きく増えるとは思えないが、同じ建築家による「ミュウミュウ」と「プラダ」のブティックを同じ通りに揃えたいという多分に美学的な理由によるのではないだろうか。

 もちろん、長い目で見れば表通りへの移転は好結果をもたらすだろう。目先ではなく、10年30年先を見すえたビジネスを構築できるのがラグジュアリー・ブランドの強みとも言えるのだ。

南青山/御幸通り

 裏通りから表通りへの移転ということになると、御幸通りから一本入った場所(「ミュウミュウ」の旧ブティックの近くに2008年オープン)にあった「ステラ マッカートニー」青山店も5月21日に、「ミュウミュウ」の新ブティックの隣に新しい店をオープンした。

(※右の背景画像)⇒

 特に設計家の名前はクレジットされていないが、ベジタリアンでレザーやファーを使用したデザインをしない動物愛護主義者のステラらしく、シンプルでナチュラルなテーストの旗艦店だ。ちなみにステラの父親は4月に来日公演を行ったポール・マッカートニーだ。

 この店は、特に夜はライトアップされて映える。御幸通りに面したウィンドーにはフルサイズのデジタルプロジェクションが設置され同ブランドのファッションショーなどの映像が流されて、行く者の目を楽しませてくれる。

 御幸通りはファッションストリートとして、表参道に肉薄する存在になっていると言えるだろう。

                

(2015.6.14「岸波通信」配信 by 葉羽&三浦彰)

PAGE TOP


banner Copyright(C) Miura Akira&Habane. All Rights Reserved.