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《Web版》岸波通信 another world. Prologue1

宇宙~この豊穣なる海(前編)


(BGM:「DEEP BLUE」 by Luna Piena
【配信2002.12.24】
   (※背景画像はアンドロメダ星雲)⇒

  The roman science of the cosmos 1

 こんにちは。「ロマンサイエンスの夢先案内人」岸波です。

 貴方を“the roman science of the cosmos”の世界へご案内します。

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“私はひどく欲していた。・・私は何か言うべきなのか? ・・宗教について?
夜、外に出て、私は星を描いた。」”
・・・ビンセント・ファン・ゴッホ

 人はこの世に生を受け、生きていく中で様々な物事や知識と出会い、驚愕し、 感動し・・・そして、そうした大切な記憶さえ、日常の暮らしにまぎれるうち、いつしか忘れ去っていくものだと思います。

 僕が少年時代、最も興味を引かれたのは宇宙についての神秘でした。

宇宙の神秘

宇宙の神秘

 しかし、高校へ大学へ、そして社会人へと成長するにつれ、共に宇宙について語ることができる仲間はだんだんと減って行きました。

 誰もが受験に、スポーツに、音楽に、そして恋愛に、就職にと興味を移して行く中で、知っていても恐らく日々の生活には何の役にもたたないであろう不要な知識は忘れ去られてゆく運命だったのかも知れません。

 我々の月が外宇宙から飛来して地球軌道に捉えられた天体かもしれないとか、木星の衛星エウロパの表面を覆う百キロメートルの氷の下には、生命を宿し得る豊饒な海があるとか、太陽系の質量のほとんどは、実は、冥王星から1光年の距離にある1兆個もの彗星の巣~オールトの雲~が占めるという話は、今日の夕食のメニューをどうするかという「生活の難問」に比べれば、多分、取るに足らないことに違いありません。

 しかし、「岸波通信」を配信させていただくうち、僕の話に興味を持って傾聴してくださる方々が大勢いるということに気がつきました。

 そういう方々は、ただ日常の生活の中に生きているだけでなく、きっと、幅広い世界にもイマジネーションを飛翔させられる「自由な精神の持ち主」なのではないでしょうか?

 僕は、そういう人々に“宇宙のロマンサイエンス”の話をお届けすることにいたしました。  「岸波通信 another world.」・・・もう一つの“岸波ワールド”にようこそ!

 

 

1 1995年、最初の「系外惑星」の発見

 銀河系には2000億から3000億個もの恒星が存在すると考えられていますが、アストロ・バイオロジー~生命に満ち溢れる「第二の地球」を発見する研究は、20世紀の半ばから活発に展開されてきました。

 そして、1995年。スイスの研究グループによって、銀河系における太陽系以外の最初の惑星(←「系外惑星」と呼ぶ。)が、ペガサス座に属する恒星「51番星」に発見されました。

葉羽(貴方は、太陽系以外の恒星に惑星があることを、「常識」だと思っていませんでしたか? 1995年に発見されたのが最初なのです。)

ペガサス座51番星

ペガサス座51番星

 しかし、我々の太陽から約48光年の距離にあるこの惑星は、地球の研究者たちの全く予想外の星でした。

 普通、我々が考える「星系」の構成というものは、太陽系のように、比較的小さな惑星が中心部近くにあり、程よく離れた位置に木星や土星のような大型惑星がある姿です。

 でも、ペガサス座51番星の第一惑星(最も内側を回る軌道の惑星)は、中心太陽から僅か0.05AU、つまり太陽系で言えば、地球から太陽までの距離の100分の5という“超至近距離”をわずか4日で公転する大型惑星(木星の8割程度の直径)だったのです。

葉羽(1AU=149,600,000 km は、地球から太陽までの距離を表す天文単位)

系外惑星

系外惑星

 この最初の太陽系以外の惑星の発見以来、今年までの8年間に、100個を超える「系外惑星」が次々と発見されています。

葉羽(※記事を書いた時点:2002.12.13)

 そして、現在、天文学者たちの興味は、水と生命に満ち溢れた「地球型惑星」の探索へと移っています。・・・これがアストロ・バイオロジーです。

 科学者たちは、ほぼ同じ物質構成を持ち、ほぼ同じ時期に生まれた銀河系の星の中で、この地球だけが唯一の「特別な惑星」ではないという確信を持ち始めています。

 つまりこの銀河は、内部に多くの生命を育む「豊饒の海」であると考えられるようになってきたのです。

 果たして我々は、他の宇宙文明とのファースト・コンタクトに成功するのでしょうか?

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2 最初の「宇宙観」に誰が到達した?

 さて、「宇宙観」というものは、いつ頃から考えられ始めたのでしょう?

 中国やメソポタミアなどでは、夜空の星を観測や占星術の対象としては興味を持っていましたが、物理的構造を持った「宇宙という認識」には至らなかったように思います。

 でも、インドに発祥した仏教には、かなり我々の知る銀河の構造に似た宇宙観が説かれています。

 一神教のキリスト教やイスラム教では、人間の住む地上と神が存在する天界とが対比されて考えられていますが、宇宙という概念はありません。

葉羽(※キリスト教には地獄という概念もあります。)

宇宙の天使

宇宙の天使

(Sharpless 2-106エリア)

 典型的多神教の仏教では、我々の住む「娑婆世界」の外で、たくさんの仏が固有の領域を所有し、人々の教化にあたっていたと考えられています。

 この“仏の領域”を「仏国土」といい、その代表的なものが薬師如来の「浄瑠璃世界」、阿弥陀如来の「極楽浄土」です。

 「極楽浄土」は「娑婆世界」から西方へ十万億仏国土をすぎたところと言われ、ここから別名「西方浄土」とも言われています。

 ただし、これは大乗仏教の教義に基づく独自の宇宙観で、古典仏教の宇宙観では、須弥山(しゅみせん)を中心として人間が住む「欲界」、解脱した禅定者(ぜんじょうしゃ)の住む「色界(しきかい)」、そして、形の無い精神のみが存在する「無色界(むしきかい)」の「三界」があると説かれていました。

葉羽(5世紀にインド仏僧ヴァスバンドゥがしるした「倶舎論(くしゃろん)」に述べられています。日本のことわざ「女、三界(さんがい)に家なし」というのは、この宇宙観に由来するものです。)

 しかし、新仏教である大乗仏教の「仏国土」という考え方は、「三界」のさらに外側に多くの世界があることを説いており、まるで我々の太陽系のほかにも幾多の太陽系があると暗示しているかのようです。

 この仏教こそ、最初の“宇宙観”に到達した宗教ではないでしょうか。

 でも、宇宙観が宗教から科学に移行するためには、さらにもう一つのハードル~人類が宇宙の中心にあるという考え方を超えなくてはなりませんでした。・・・「地動説」です。

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3 最初に地動説を唱えし者

 人類の歴上、天体の謎について考察し、かつて最初に地動説を唱えたのは、実はコペルニクスではなく、ギリシャ時代、エーゲ海の一番東にある小島、サモス島に生まれたアリスタルコスでした。

 サモス島は、ギリシャ神話の空の女神であったヘラが生まれたとされている美しい島で、ヘラを祭った神殿の廃墟~ピタゴリオン遺跡で有名です。

 ヘラは後に、オリンピアの全能神ゼウスと結婚してその妻となり、新婚の夜をこの美しい島で過ごしたと言われています。

葉羽(ヨーロッパでは、天空の銀河~天の川のことを「the Milky Way」と言いますが、この由来は、乳が女神ヘラの乳房からほとばしり出て、天を横切って流れたものが銀河になったというあるという伝説からです。)

ヘラ神殿

ヘラ神殿

(サモス島)

 偉大な哲学者アリストテレスたちが、地球を中心にそのまわりを太陽が回っていると考えていた頃、アリスタルコスは、月に写る地球の影を見て、太陽は遥か彼方にある大天体ではないかと考えていました。

 アリストテレスたちが考えるように、見かけどおり、太陽が月と同じくらいの小さな天体であるならば、地球の影が直径約1/3しかない月に同じ大きさで写るはずがなく、これは太陽からの光が真横からほぼ平行に当たっているからで、「太陽は光が平行になるくらい遠くにある」と考えたのです。

 そして、太陽までの距離と大きさを計算して、太陽が巨大な天体であることをつきとめ、太陽のような巨大な天体が、地球のような小さな星の周りを回っていると考えるのは不合理だとして、地動説を唱えました。

葉羽(コペルニクスは留学先のイタリアの医科大学の古文書でアリスタルコスの説を知り、それを支持する論文を著しました。

 しかし、自分の論文が出版される時に出典があったことを隠し、「自説」として発表したのです。彼は、法王パウロ三世に宛てた手紙の中でそのことを告白しました。)

コペルニクス

コペルニクス

(C)Wikipedia

 しかし、アリスタルコスがせっかく到達した科学的宇宙観は、その後、長い眠りにつくことになります。

 僕は、このことは、一神教であるユダヤ教やキリスト教がその後の精神世界を支配したことと無縁ではないと感じます。

 事実、地動説を我が物のように唱えたコペルニクスは、教会からの迫害に遭いました。

 こうしたコペルニクスやガリレオの「科学的な考え方」は、次第に中世キリスト教世界の「神秘主義」に埋没していた人々の眼を覚まさせることになり、人類は時間をかけて、「天空に果てしなく広がる星々もまた我々の太陽と同じものである」と認識して行くのです。

 「宇宙」~この豊饒なる海の実像に迫るためには、まだ数世紀を待たねばならない頃のお話でした。

 それでは、宇宙の正しい構造を最初に理解した人、宇宙全体の素粒子の数を数えた人の話を後編で。

 

/// end of the “Prologe1「宇宙~この豊穣なる海(前編)」” ///

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《追伸》 2014.4.19

 ようやくこのPrologu1をリニューアル・アップすることができました。

 このコンテンツは、《Web版》「岸波通信」が始まって、記念すべき最初のコンテンツでした。(2003年6月開設)

 当時はまだ個人ホームページを運営する人も少なく、Biglobeのチャットでホームページを持っている人に声掛けし、一つ一つ教わりながらの手さぐり制作でした。

(※その最初の「先生」の一人が、今もお付き合いいただいているfujikoエンジェルさんです。)

 そんな中で一番最初に作ったのが、この記事の最初の方にある“恐竜がanother world.のロゴの後ろを通り過ぎる”タイトル・バナーです。

 いきなり動画からチャレンジするというのも、今から考えれば無謀な話。それでも二日をかけて完成し、動作を確認できた時の喜びは今でも忘れません。

 あれから10余年・・・よく続けて来れたものだと思います。

 現在進めているリニューアルは、今年二月のパソコンのクラッシュとデータの散逸が契機でしたが、それと併せて10台使っていたサーバーの統合(※YAHOOの提供容量が10ギガに増量されたことで可能に。)とWindows8.1やAdobeCC、Internet Explorer 11、HTML5など最新バージョンに適応させる作業も同時に行っています。

 このため、ほどんどのコンテンツが再編集という膨大な作業になっていますが、おそらく自分自身としては、今回が最後のリニューアルになるでしょう。(もう歳も歳ですし・・)

 いつの日か僕が死んでしまった時、このホームページは丸ごと消滅するでしょう。(おそらく一か月程度で。)

 その意味では、このホームページは僕の人生そのものと言えるかもしれません。

 

 では、また次回のanother world.で・・・See you again !

天空に立ち上がる天の川

天空に立ち上がる天の川

 

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To be continued⇒ “Prologue2 coming soon!

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