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《Web版》岸波通信 another world. Episode50

太陽系衝突


(BGM:「DEEP BLUE」 by Luna Piena
【配信2024.11.12】
   (※背景画像は海化計画があるチュニジアの塩湖)⇒

  Interstellar objects

 こんにちは。「ロマンサイエンスの夢先案内人」岸波です。

 ゆるゆる更新で遂に第50号、貴方をまたも“the roman science of the cosmos”の世界へご案内します。

 

◆狂った星座

 SF&ミステリ作家であるフレドリック・ブラウンのSF作品集『宇宙をぼくの手の上に』の中に『狂った星座』という掌編がある。

『宇宙をぼくの手の上に』フレドリック・ブラウン著

 コール天文台に努めるフラター君は、その時、二つの作業をしていた。一つは天体望遠鏡で双子座を調べる事、そしてもう一つは今の給料でエルジー女史にデートを申し込めるかという検討作業だ。

 しかし彼はそこでトンデモナイものを目にする。32光年先にある「ふたご座」の恒星ポラックスが「動いた」のだ。

 ふたご座

 やがて夜空の多くの星座が動き出し、世界中を巻き込む大騒動へと発展するのだが、ブラウンの常套手段はどんな奇怪な出来事でも最後に合理的説明をつけるというところにある。

葉羽まあ、「こじつけ」の場合もあるが(笑)

 こんなあり得ない現象にどう説明を付けるのかは読んでのお楽しみとするが、実際問題、夜空の恒星は「固有運動」をしているため、現在「ふたご座」や「おとめ座」などと呼んでいる星座の姿は、遥か過去には別の姿をとっていたはずだ。

◆火星からの石、そして太陽系外からの飛来物

 一方、大阪関西万博で展示されている「南極で発見された火星の石」のように、太陽系の惑星間で巨大火山の噴火や小惑星衝突などにより物質をやり取りすることがある。

南極探検隊が発見した「火星の石」(大阪・関西万博で展示中)

 だが、2017年にハワイのパンスターズ望遠鏡によって発見された小惑星「オウムアムア」は、何と「太陽系外から飛来」したことが確認されている。

 もちろん「太陽系外天体」が発見されたのは観測史上初めてのことだ。

  オウムアムアの想像図

葉羽葉巻のような細長い形状をしていたので、当初は「外宇宙からの宇宙船では」という憶測も飛び交った。なお、「オウムアムア」はハワイ語で「遠方からの使者」を意味する。)

 この「オウムアムア」は、時速約31万5000kmという途轍もない速度で太陽からわずか0.25天文単位(約3700万km)の距離をスイング・バイして加速し、翌年5月には太陽系を脱出してペガサス座方面へと飛び去った。

 1天文単位(AU)は地球と太陽との平均距離であるので、当然に地球の内側まで侵入したことになる。

◆交差した太陽系

 しかし、もっと驚くべきものが発見された。

 地球から「いっかくじゅう座」の方向へ17~23光年ほどの位置に「ショルツ星」という恒星が存在しているのだが、その遠ざかる「固有運動」を逆算すると、約7万年前に我らの太陽系をかすめて飛び去った可能性があるのだ。

「ショルツ星」(赤色矮星と褐色矮星の二重星)

  「ショルツ星」は木星の86倍程度の質量を持ち、暗く穏やかな核融合反応を行っている「矮星」に分類される赤色矮星と褐色矮星の「二重星」であり、惑星も伴っている。

 太陽をかすめたと計算される位置は0.8光年(8兆km)で、最も近い恒星系プロキシマ・ケンタウリが4.2光年の距離であることから「極至近距離」と言える。

 

 太陽系接近時の影響だが、太陽系外延部の1万AUに広がる「オールトの雲」の中を通過し小天体群を散乱させた可能性があるということだ。

葉羽1万通りの軌道を計算したシミュレーション研究によると、98%の確率で「オールトの雲」を通過している。

  オールトの雲(外縁天体群)

 7万年前の人類の祖先は、地球からどのような光景を目にしたことだろう?

 実は、最接近時でも10等星程度の明るさであるため、「ショルツ星」そのもを目視することは困難であったらしいのだが。


 むしろ問題は、「ショルツ星」そのものやその惑星によって散乱させられた「オールトの雲」の小天体群が、地球など内惑星に与える影響だ。

 もしかして、地球を目がけて「大量のメテオ」が降り注いだのか? ・・いやいやいや、その影響は「これから」出てくるのだ。

 何故なら、「オールトの雲」から小天体群が地球など内惑星にまで到達するには「約200万年」を要するからだ。

葉羽その頃、人類が居るのかさえ・・?

 「天文学的距離」という言葉があるが、本当に宇宙は広いと感心する。

 

/// end of theEpisode50「恒星間天体」” ///

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《追伸》

 現在チリで建設が進められている「大型シノプティック・サーベイ望遠鏡(Large Synoptic Survey Telescope; LSST)」などを用いた観測によって、今後数多くの恒星間天体が発見される可能性があります。

 そんな中で、現在は地球から62.3光年の彼方にある「グリーゼ710」が我ら太陽系に向かって接近中であるとのこと。

 

 軌道計算によれば、地球から0.065光年の距離まで接近するとのことで、7万年前の「ショルツ星」(最接近時:0.8光年)より遥かに内側まで到達すると考えられている。

 え、「いつ」かって? それは、今から130万年後だそうです。じゃ、まっいいかな(笑)

 

 では、またいつかanother world.で・・・See you again !

太陽系外恒星「ショルツ星」の大接近(想像図)

 

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To be continued⇒ “Episode51 coming soon!

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