かいつまんで言えば、フランスの科学者エチェゴイェン教授が唱えた「サハラ砂漠を内海に変える」という大胆な提案が、センセーションを巻き起こしたという話です。
地中海から北アフリカの高地を貫く導水トンネルを建設すれば、4分の1が海面下にあるサハラ砂漠を「内海」に変えることが可能。
そうすれば、飢饉に瀕している数百万の人間が自給自足できるようになるという主張です。
『日経サイエンス』
実際、実現されてはいないので見込み違いがあったのでしょうが、アイデア自体は面白いと思い少し調べてみました。
◆湿潤と乾燥/振動する砂漠気候
そもそもサハラ砂漠の面積は約1,000万平方キロメートルでアフリカ大陸の3分の1近くを占め、アメリカ合衆国に匹敵する広さがある。
しかしこの地はずっと砂漠であった訳ではなく、地球の気候変動によって変遷してきた。
最も拡大したのは約1万2千年前で、その後の最終氷期の終焉に伴って湿潤化が進み、紀元前6千年頃にはサバンナやステップに変化して森林も形成された。
紀元前6千年・・・ほんの少し前まで、サハラは緑の世界だったのですね。エジプトの古王朝が紀元前3千年に成立した頃は、まだ沃野だった可能性もあります。
アフリカのサバンナ
その後、紀元前3千年頃から再び乾燥化が始まって現在に至るが、現在、国連環境計画(UNEP)の調査では、特にサハラ南側において毎年15,000平方キロメートルずつ砂漠化が進んでいると報告されている。
これを抑止しようとしたエチェゴイェン教授の計画は、何故成功しなかったのか?
◆実際は岩石砂漠と呼ぶべきサハラ
実は、我々が描いている砂漠のイメージ・・砂丘が延々と連なった姿は「エルグ」と呼ばれるが、これはサハラ砂漠の14%に過ぎず、ほかの多くは台地状の岩石砂漠なのだ。
エルグ……14%
大部分が岩石砂漠
サハラ砂漠には山脈や火山もあり、その最高峰は北部チャドのエミクーシ火山で標高が3,415メートルもある。
エミクーシ火山(3,415m)
そう・・「サハラ砂漠の4分の1が海面下」という通説は正確でなかった。
すると、大工事に要する莫大なコストに比べれば効果が薄く、さらには、毎年サハラから風に巻き上げられた砂が地中海や遠くアマゾンまで到達し、「栄養源」を供給しているという「恩恵」への影響も軽視されていたのだ。
ならば・・・・・
この計画はそもそも荒唐無稽だったのだろうか?
◆「ザ・シー・イン・ザ・デザート」計画
ところが21世紀に入り、再びこの「サハラ海化計画」が始動したという記事が報告された。場所はアフリカ北部で地中海に面したチュニジア。
チュニジアの南部にある塩湖ショット・エル・ジェリドに地中海の水を注ぎ入れ、面積6千平方キロメートルの人工湖を作る計画「ザ・シー・イン・ザ・デザート」がスタートしたのだ。
《追伸》
先月、2024年10月のことですが、サハラ砂漠にも大雨が降って洪水となり、大きな湖が出現したとCNNが伝えました。
下が報道にあった実際の写真です↓
今回は、Reiちゃんとミルクティー嬢が休載なので、「穴埋め」のため一本書いてみました。
すぐに書けそうな科学ネタが4つくらいはあるので、また「穴埋め」が必要になったら書くかも・です。(笑)