Uyuni
こんにちは。「ロマンサイエンスの夢先案内人」岸波です。
貴方をまたも“the roman science of the cosmos”の世界へご案内します。
“一瞬でもこの絶景をみて、心のうちがわくわくする人間と、そうでない人間とはちがう。”
・・・坂本龍馬(「竜馬がゆく」より)※初めて富士山を見て
私の住む福島県は、福島第一原発の事故によって世界的に有名な場所になってしまいました。
福島県は、磐梯山、猪苗代湖、裏磐梯、尾瀬など風光明媚な自然資源に恵まれ、磐梯山周辺地域については世界ジオパークの指定に向けて活動を始めた矢先でしたので、その活動の一端を担っていた私も大きなショックを受けました。
冒頭の坂本龍馬の名言・・・これは富士山を見ての言葉ですが、福島県にもそんな絶景が存在します。
それが「天鏡湖」とも呼ばれる猪苗代湖。
琵琶湖、霞ヶ浦、サロマ湖についで日本で4番目に大きく(東北地方では最大)、透明度の高い波静かな湖面は、あたかも鏡のように天を映し出します。
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天鏡湖
(猪苗代湖)
(C)齋藤 誠
「浮氷」(第4回猪苗代湖・裏磐梯湖沼フォトコンテスト入賞作品) |
この猪苗代湖は、流れ込む長瀬川の酸性度が高いために魚類やプランクトンが棲みにくく、日本一水質のきれいな湖としても知られます。
特に春の早朝、西岸の中田浜周辺の湾岸道路から眺めると、乳白色の湖面が幻想的な風景を映し出して、まさに絶景です。
この猪苗代盆地が形成されたのは、更新世中期、約20万年前のこと。
その後、会津磐梯山による9万年前の翁島火砕流堆積物と5万年前の頭無火砕流堆積物によって河川が堰き止められ、猪苗代湖の原型が出現しました。
天鏡湖は一日にしてならず。地球の長い営みによって世にも稀なる美観は形成されたのです。
さて、世界にはもう一ヶ所、猪苗代湖と同じように「天空の鏡」と呼ばれる場所が存在します。
それが地球の反対側、南米ボリビアのウユニ塩湖です。
写真を見て分るとおり、猪苗代湖(天鏡湖)と比べて際立った違いがあります。それは「山」が存在しないこと。しかも極めて浅い。
ボリビア中西部のアルティラーノにあるこの場所は、南北約100km、東西約250km、面積は東京都の約6倍~1万2千平方キロに及ぶ広大な塩の大地です。
標高は約3700m。富士山と同じくらいの高さに天空を写す「巨大な鏡」が存在していることになります。
アンデス山脈が造山運動をした際に、流れ出す川が存在しない巨大盆地に海水がそのまま取り残され、その後乾燥した気候となったために塩原が形成されました。
最初、この場所をGoogle earthで確認しようと探しましたが見つけられませんでした。
それもそのはず、ウユニ塩湖は一年の僅かな期間にだけ出現する“幻の湖”だからです。
湖が存在しない通常の期間、現地は見晴るかすかぎり純白の世界・・・下の写真がそうです。
「ウユニ塩湖」と呼ばれるのは俗称で、学術的には「ウユニ塩原」といいます。
この地方の雨季である1月から3月の間、平坦な塩原が薄く冠水し、幻のウユニ湖が姿を現します。
塩原の高低差は僅かに50センチメートル・・・そう、ここは“地球上で最も平坦な場所”。
この平坦な塩原を覆う水面にはほとんど波が立つこともなく、水が蒸発してしまうまでの間、巨大な「天空の鏡」が出現するのです。
水の蒸発具合によっては、車で走行できる状態の場所も現れます。
しかし、この広大な塩湖の中心近くまで行くと、周囲はどこも上下対象の世界。目印が全くない。
このため、塩湖に一般の自動車で侵入することはまず不可能。地元の観光業者の運転に委ねるしかありません。
そんなふうにして湖の中心近くまで行った写真が下。
まるで天上世界にいるよう・・・この世のものとは思えない美しすぎる風景です。
ウユニ塩湖の塩は食用にも利用されます。
また、変った使い方としては、塩原から数10センチから1メートル程度の塩ブロックを切り出し、家畜放牧地にそのまま置いて家畜の塩分補給に舐めさせたり、建物の建材として用いたりします。
(※塩原の周囲には、こうして造られた現地人の家もある。)
また塩原の中ほどには、観光客用に造られた“塩のホテル”もあります。
屋根以外は、壁・テーブル・ベッドまで全て“塩”。
ウユニ駅前にある旅行代理店で宿泊の予約ができるほか、喫茶だけで立ち寄ることも可能です。
やがて陽は落ち、宵闇が迫る塩湖。
辺りはまた別世界の様相を呈してきます。
どこまでが空・・・
どこまでが鏡・・・
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夕暮れの塩湖
(C)travel
Memorial
Official Blog |
もしかすると「天国」のイメージとは、人類が最初に見たウユニ塩湖の記憶なのかも知れません。
すでにそこは“天と地の狭間”でさえありません。“天と天”・・・鏡像の世界。
人はここに立って、どんな想いを巡らせるのでしょう。
満天の星。
鏡合わせのミルキーウェイ。
天と地の宇宙。
ここはまさに“宇宙と向かい合う場所”。
自分達の周りにある「世界」や「社会」から視線が離れ、“宇宙の中の地球”、“宇宙の中の自分”を意識せざるを得ません。
そして、宇宙の片隅に生まれた人類の“果てしのない孤独”。
ここは“本当の自分と出会う場所”かも知れません。
生命の孤独 (詩:葉羽)
百億の昼と千億の夜を超え
この惑星(ほし)に芽生えた
生命(いのち)という名の不可思議・・・
宇宙の片隅に
生れ落ちた生命(いのち)たちの
果てしの無い孤独・・・
とめどない悲しみに
耐えかねて 耐えかねて
耐えかねて 見上げた夜空・・・
・・・そしてわたしは
ほしたちのささやきをきいた
(※葉羽詩集「生命の孤独」>>)
/// end of the “Episode41「天空の鏡~ウユニ塩湖~」”
///
《追伸》
つい先日、南鳥島沖の排他的経済水域(EEZ)内の海底で、世界最高濃度のレアアースが発見されました。
実は、このウユニ塩湖にも膨大なリチウムが眠っており、埋蔵量で“世界の半分”と目されています。
電気自動車などの電池に用いるために、リチウムの需要は将来飛躍的に高まると目されていますが、ボリビア政府でも公社のパイロット事業としてプラントの建設を進めています。
この『天空の鏡』も、やがてプラントの立ち並ぶ景色に変貌してしまうのでしょうか?
「天空の鏡」が「天空の鏡」であり続けるうちに、是非一度、訪れたいものです。
では、また次回のanother
world.で・・・See
you again !
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