The
Mysterious Moon 4
こんにちは。「ロマンサイエンスの夢先案内人」岸波です。
貴方をまたも“the roman science of the cosmos”の世界へご案内します。
“蒼月の鋭き光動かすらむ封ぜられたる魔なるべきもの” 一夢
月といえば黄色か白と表現されるのが普通ですが、NHK紅白歌合戦の記念すべき歌唱者第一号(紅組トップバッター)となった菅原都々子さんの名曲に「月がとっても青いから」という名曲があります。
月が青く見えることなんて本当にあるのでしょうか?
実は・・・・・・
地球上で見る月が実際に青く見えることがあるのです。
1883年にインドネシアのクラカタウ火山が噴火した時に、その粉塵の影響で約2年間は日没が緑に染まり、月はブルーに輝きました。
このように、火山の噴火や隕石の落下によって発生するガスや塵の影響でこれを通過する光の色が変わる現象をラマン効果といいます。
ブルームーン・・・なんてロマンチックな風景なのでしょう。
しかし、和歌や歌謡曲に歌われる“青い月”がこのラマン効果によるものとは思えません。
では何故、日本でも「月が青い(蒼い)」という表現が用いられるのでしょう?
1 月がとっても青いから
波長の長い青紫色の光は、地球の大気を長く通過すると“散乱”を受けて見えにくくなる性質があります。
夕暮れに太陽光がナナメに射しますと青い光が“散乱”して失われるのです。
結果、波長が短い赤色が強調され、空が茜色に染まるのが「夕焼け」というわけです。
これは月も同じことで、地平線近くにある時には赤味が強調され、天頂部にある時は青みがかって見えるのです。
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ブルームーン(薔薇)
←1964年にドイツで開発された青いバラ |
また、人間の網膜の働きで、明るい場所では赤を鮮やかに感じ、次第に暗くなっていくと青が強調されて見えるようになります。
これは、19世紀のチェコの生理学者プルキニェが発見したもので、“プルキニェ現象”と呼ばれます。
こうした“太陽光の散乱”と“網膜のプルキニェ現象”があいまって、日没で暗転した空の天頂部にある上弦の月が最も青みがかって見えるのです。
うーん・・・「月がとっても青いから遠回りして帰ろう」。
この歌は、まさに科学的事実に基づいていたと言う訳です。
茶人千利休は、薄暗い茶室で浅黄色(緑がかった水色)の足袋を愛用していたと言います。
暗い場所では、最もアピールする色です。
もしかすると利休は、経験的に“プルキニェ現象”を知っていて、それを利用していたのかもしれませんね。
2 二回目の満月
また、暦の上でひと月に満月が2回ある時、一回目を“ファーストムーン”、二回目を“ブルームーン”と呼びます。
そう呼ばれ始めるきっかけは、1946年のことでした。
カナダの民俗学者ヒスコックは「メイン州農民年鑑」に記載されていた“ブルームーン”という言葉を[「その月二回目の満月」という意味で天文雑誌「Sky&Telescope」誌に紹介しました。
時は下って1980年、このことをアメリカのラジオ局が番組で紹介したのです。
すると、リスナーから大反響があり、瞬く間に“ブルームーン(二番目の満月)”という言葉は世に広まりました。
ところが・・・・・・
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ブルームーン・ストーン
←蒼い光が浮かび上がる宝石 |
1999年に「Sky&Telescope」誌が「メイン州農民年鑑」のバックナンバーを検証したところ、ヒスコックが言っていた“ブルームーン”は「その月二回目の満月では有り得ない」ことが突き止められたのです。
事実はどうであったのか?
「農民年鑑」では一年を4シーズンに分け、1シーズンに3回の満月を割り振って、冬の第一満月をMoon
after Yule(降誕祭の後の月)、次をWolf Moon(狼月)・・・というふうに名付けています。
月の公転周期は平均すると29.530589日になりますので、概ね各シーズンに3回の満月が割り振られます。
でもシーズンの始まりが満月の場合、4回目の満月が巡ってくることがあるのです。
そうです・・・・
「農民年鑑」は、この名前の付いていない“シーズン4回目の満月”をブルームーンと呼んでいたのでした。
“ブルームーン”という言葉の語源自体は種々の説があって定かではありません。
一説によれば「フランス語の“二つの月”を英語に翻訳したときに
"la
Double lune" → "double lune" → "de bluh loon" → "the
blue Moon"
~と変化したと言われます。
事実は判明しました。
でも、事態は既に手遅れでした。
世の中には、既に“月2回目の満月”をブルームーンと呼ぶ誤解が根付いてしまったのです。
しかも・・・
「ブルームーンをひと目、見ることが出来ればいいことが起きる」、「ブルームーンを二回見れれば幸せになれる」という“神話”の尾ひれまで付いて。
3 幸福のブルームーン
さて、月二回目の満月はどのくらいの頻度であるのでしょう?
1991年から2010年までの20年間で見ると、そのうちの8年で「ブルームーン」があります。
概ね2~3年に一度といったところでしょうか。
2018年1月31日には、更に珍しい“皆既月食のブルームーン”が日本全国で見られるはずです。
ところで・・・今年1月1日は満月でした。
さらに、1月31日も満月でした。
そう、この日がブルームーンだったのです。
しかも、今度の3月1日が満月で、3月30日も満月のブルームーン!
何と2010年は、一年に二回のブルームーンがあるラッキーな年なのです。
そのことを職場の若い女性に話したところ・・・
「ええー、どうして早く教えてくれなかったんですか!?」
「いや、僕も後から気が付いたんだよ」
「3月30日は絶対見ます! だって幸せになれるんでしょ?」
「あの、ブルームーンを二回見ると幸せになれると言うんだよ」
「1月31日も見たような気がします。いえ、きっと見ました。そうに決まった!」
「・・・・・・・・。」
4 完全なる愛
また、ブルームーンと名付けられたカクテルもあります。
ジンをベースにして、バイオレット・リキュールとレモンを加えたこのカクテルは、ロマンティックな薄紫の色合いで、その美しさはカクテルの中でもトップクラスと言われます。
そして、このブルームーン・カクテルの別名が「完全なる愛」。
もちろん、直訳の「青い月」と呼ばれることもあります。
それはそれでグッと来る命名ですが、「完全なる愛」という神秘的な名前もいいですね。
僕は知りませんでしたが、花に花言葉、宝石に宝石言葉があるように、カクテルにも素敵な二つ名が付けられているのですね。
では、どうして「完全なる愛」なのか?
実は、材料として用いられるバイオレット・リキュールの商品名がフランス語で“パルフェタムール”。
そう・・・その意味が「完全なる愛」なのです。
歌手の加藤登紀子さんが2003年に著した「青い月のバラード」という本があります。
副題には“あるひと組の男女の愛の軌跡”とあります。
彼女は全共闘の活動家だった藤本敏夫氏が投獄されている時に、“獄中結婚”したことで話題を呼びました。
藤本氏は出所後、有機農法の実践家となり「大地を守る会」の初代会長などを務められましたが、2002年に肝臓ガンのため永眠。
その時、彼女がマスコミに向けて発したコメントが“二人の人生がこれから別の形ではじまる”というものでした。
それを具体化したのが、夫婦の愛の軌跡を綴った「青い月のバラード」であったのでしょう。
でも、何故「青い月」でなければならなかったのか?
それはきっと、ブルームーンに込められた「完全なる愛」という別の意味がどうしても必要だったのではないでしょうか?
そんな素敵なエピソードもあるブルームーン。
2010年3月30日の晩には、貴方も夜空を見上げてみませんか?
/// end of the “Episode38「ミステリアス・ムーン4 ~ブルームーン~」”
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《追伸》
めったに見ることのできないブルームーン。
そのために英語には“once
in a blue moon”という言い回しが生まれました。
その意味は、「極めて稀なこと」「決してあり得ないこと」「できない相談」です。
もしも貴方が、素敵な女性とバーに行ったとき、彼女の注文がブルームーン・カクテルであった時には注意遊ばせ。
それが“完全なる愛”というメッセージなのか、はたまた“できない相談”というお断りのメッセージなのか、じっと彼女の“瞳の奥の真意”を探らなければなりませんものネ!
では、また次回のanother
world.で・・・See
you again !
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