Illusion in Cosmos
こんにちは。「ロマンサイエンスの夢先案内人」、岸波です。
貴方をまたも“the roman science of the cosmos”の世界へご案内します。
小さな頃、天文雑誌に掲載されていた美しい星雲の写真なんかを見てドキドキした経験はありませんか?
最近、それに近いイメージを眼にして、胸の高鳴りが止まりません。
それは、天文サイト「アストロアーツ」に掲載されていたNASAの「宇宙最初の光」という画像です。
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宇宙最初の光
(NASAの想像図)
←宇宙誕生から2億年後。
宇宙の暗黒時代に終わりを告げる
爆発的な銀河の誕生。
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昨年2月、NASAのマイクロ波観測衛星WMAPによる宇宙背景放射の観測によって明らかにされたところによりますと、宇宙年齢は137億年でほぼ確定、最初に銀河が形成されたのは宇宙誕生から2億年くらい経ってから始まったとのこと。
ということは、それ以前の宇宙は“光が存在しない漆黒の闇”。
その宇宙の暗黒時代にフィナーレを告げるように、2億年目くらいから第一世代の銀河が爆発的に誕生し、宇宙は“晴れ上がった”のだそうです。
そして・・・ この宇宙に光をもたらした「第一世代の銀河」の一つが、深宇宙観測によって初めて発見されました。
今年3月、ヨーロッパ南天天文台が銀河レンズを通して発見したAbell 1835 IR1916銀河は、地球からの距離が132.3億光年・・・別の言い方をすれば宇宙誕生から僅か4億7千万年後に誕生した原始銀河です。
その“最果ての銀河”を含めて、「宇宙最初の光」が誕生した時代を描いたNASAの想像図、まさに光の洪水・・・。
神の「光あれ」の言葉と共にこの世に出現したファンタスティックなイリュージョン・・・感動を覚えずにはいられませんね。
それにしても・・・キレイだなぁ、この絵!(涙)
ということで、今回のanother world. は、宇宙が我々に見せてくれる奇跡・・・ファンタスティックな“天空のイリュージョン”を特集してお届けします。
1 天空のイリュージョン
真紅のグランド・クロス
最初の写真は、昨日、5月14日にハッブルサイト・ニュースセンターからリリースされたばかりの最新映像で、アルファベットの「X」の形をした不思議な星雲HD44179です。
地球からの距離は2,300光年。
地上の望遠鏡からは横長の長方形として見えていたことから、これまではRed Rectangle(赤い長方形)と呼ばれていました。
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真紅のグランド・クロス
いっかくじゅう座
【HD44179星雲】
←不思議な「X」字状の星雲です。
どうして、こんな形に?
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しかし、ハッブル宇宙望遠鏡が捉えた詳細映像は、ごらんのとおり“真紅のグランド・クロス”に綾取りの糸を渡したような網状の構造を持った姿でした。
これは、中心部にある連星から4つの方向にガスや塵が噴射されているもので、数百年おきに繰り返される強い放射が波のような構造を見せていると考えられています。
まさに神秘の造形です。
ダイヤモンド・ブレスレット
次は、2004年4月24日にハッブル宇宙望遠鏡の打ち上げ14周年記念として公開された美しい画像、宇宙に浮かぶ“ダイヤモンド・ブレスレット”です。
かじき座にあるこのAM544-741銀河は、地球からの距離が3億光年、リングの直径は約15万光年と、我々の天の川銀河の1.5倍の大きさがあります。
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ダイヤモンド・ブレスレット
かじき座
【AM544741銀河】
←壮大な“銀河衝突”の残滓。
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青白くキラキラと輝くこのリングは、二つの大銀河が衝突した結果、新しい星が次々に誕生している星域です。
青白く輝いて見えるのも新しく誕生した高温の大質量星が多いため。
そう・・・我々の天の川銀河と隣のアンドロメダ銀河も今から50億年後には大衝突を引き起こし、このような美しい姿に輝くことになるのです。
宙空に煌く薔薇の花束
こちらは、2004年2月14日にNASAがプレス・リリースした宙空に煌く薔薇の花束、ケフェウス座の散光星雲NGC 7129のうっとりするような画像です。
ん? 2月14日? そう。これは、バレンタインデーにちなんだ宇宙からの贈り物として、特別にこの日に合わせてリリースされたのです。
NASAも粋な計らいをするではありませんか・・・。
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薔薇の花束
ケフェウス座
【散光星雲NGC7129】
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画像では、差し渡し10光年ほどの狭い領域に約130個の若い恒星が集まり、中央の赤い部分には炭化水素が集積して熱せられ、膨大な赤外線を放射しています。
なお、恒星の半数にはガス円盤が取り巻いていて、将来、ここからたくさんの惑星が生まれて来ることでしょう。
ダイヤモンド・スター
同じ2月の14日に公表されたもう一つの画像がこちらです。
「ありえない!」って、そこで言っているアナタ・・・そう、そこのユーリさん、はやまってはいけません。
これは、50光年の彼方、ケンタウルス座で発見された白色矮星の内部構造のイメージ画像です。
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ダイヤモンド・スター
ケンタウルス座
【白色矮星】
←NASAが作成したイメージ画像。
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白色矮星といえば、我々の太陽クラスの質量を持った恒星が燃え尽き、周囲の水素を吹き飛ばして最後に凝縮した姿。
この星の構成物質は・・・何と正真正銘のダイヤモンドなのです。
この巨大なダイヤモンドの直径は約4千キロメートル。カラット数で言うと・・・うーむ、ちょっと無理がありますね。
ちなみに、地球上でこれまで発見された最大のダイヤモンドは、3,100カラットの原石からカットされた「アフリカの星」(530カラット)だそうです。
(←1カラットは0.2グラムなので106グラム・・・卵二個分でしょうか。)
2 暗闇のハート
大きなダイヤモンドが出てきましたが、映画「タイタニック」に登場したのが巨大サファイア“碧洋のハート”。
もともとタイタニック引き上げの動機というものが、このルイ16世が残したと言われる地上最大のブルー・サファイアを手に入れるためでした・・・。
“碧洋のハート”を3年間も探し続けていたラベット(ビル・パクストン)が、やっとのことでタイタニック号から泥まみれの金庫を引き上げる・・・。
その扉を開くと、果たしてそこに入っていたものは“碧洋のハート”ではなく、泥にまみれた一枚の絵・・・そこから物語りは始まりました。
何とドラマティックなストーリーでしょう・・・。
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実際に売り出された
“碧洋のハート”
←映画に登場したのと同じ仕様の
合成サファイア・ペンダント.。
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ところで・・・ こちらは、昨年のバレンタインデーに公開されたNASAのエックス線観測衛星チャンドラーが撮影した“暗闇に浮かぶハート”のエックス線解析画像です。
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暗闇のハート
きょしちょう座
【散開星団NGC346】
←キレイなピンク色。
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地球からは約18万光年のきょしちょう座にあるこのハートは、散開星団NGC346の中心部から100光年にわたって広がっている高温ガスの姿。
今から数千年前に、寿命を終えた恒星が超新星爆発を起こした残骸であろうと考えられています。
ハートの中心部より少し上に見えるピンクの天体は、もともと超新星爆発を起こした連星の片割れ。
このように、連星の一方が先に寿命を終えると、もう一方の連星に質量が流れ込み、明るく巨大な恒星に進化するとともに、爆発した星の方は、やがて巨大質量を持つ小さな暗い星となることは、以前解説しました。
(←Episode2「シリウス・ミステリー」)
何ともロマンティックな姿です。
ところで、ハートと言えばもう一つ、有名な画像があります。
1999年の6月に、NASAの火星探査機マーズ・グローバル・サーベイヤーが撮影した火星のハート型地形です。
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火星より愛を込めて
(火星タルシス高地)
【アルバパテラ火山付近】
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この地形は、タルシス高地にあるアルバパテラ火山の東側にあるもので、横幅が約2.3キロメートル。
よく見ると、大きなハートから中ハートと小ハートが飛び出しているようにも見え、まるでアニメーションによく使われる効果のよう。
もしも、グローバル・サーベイヤーが有人探査機だったら・・・その宇宙飛行士は仰天したに違いありませんね。
3 サンプル・リターン・プロジェクト
さて、最後にもう一つ、オマケのエピソードを・・・。
以下は、毎回レスをいただいている枚方市のDreamさんからのうれしいお便り。
Dream
葉羽 様
おはようございます。いま岸波通信拝見しました。
美しいBGMを聴きながら「人類の叡智」ニュートンやアインシュタインの名言幾つか聞いたことがあります。いつも心に刻んでいます。
虹のトリビァ。特に感動!真円の虹一度見てみたいです。
イギリスのウインザー城その他懐かしく拝見しました。まさに至福の一時でした。
昨年5月9日Muses-C「はやぶさ」が内之浦宇宙センターから打ち上げられました。
今も順調に目的の小惑星「いとかわ」に向かって飛行を続けています。
秒読みがはじまり。3.2.1.0.発射。
紺碧の空に白煙を残し舞い上がって行った光景が今もはっきり脳裏に焼き付いています。
そのタゲットマーカーのアルミ状の部分に私の名前が刻まれています。着陸成功すれば永遠に宇宙に残されます。まさに夢とロマンです。 |
Dreamさんの名前を刻んだターゲット・マーカーが永遠に小惑星イトカワに残される・・・凄いと思いませんか?
日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、無人小型探査機で小惑星から物質を採取して持ち帰るという世界で初めてのサンプル・リターン・プロジェクト「ミューゼスC計画」を実施しているのです。
この計画に沿って昨年5月9日に打ち上げられた探査機がJAXAの「はやぶさ」・・・目指すのは地球に向かって楕円軌道を接近中の小惑星「イトカワ」です。
イトカワは、日本のロケット開発の父である故糸川英夫博士にちなんで命名されたもので、横312メートル、長さ548メートルで、なだらかな起伏がある細長い形状は、まるでジャガイモのメークイーンのよう。
はやぶさは、イトカワへの着陸に当たって、最初に着陸地点の目印となるターゲット・マーカーという部品を落とし、これをめがけて最後の100メートルの距離を降りていくのです。
そして、このターゲット・マーカーに、Dreamさんをはじめ全国から公募された100万人の名前が刻まれます。
イトカワが地球から195万キロメートルまで最接近するのが来月(2004年6月26日)で、約12等級まで明るさを増しますが、残念ながらその時は南半球側にあるために、日本からの観測はできません。
はやぶさの着陸が2005年の夏、そして、サンプルを採取して地球に帰還するのが2007年の7月。
日本の航空宇宙技術の快挙を皆で応援しようではありませんか。
/// end of the “Episode14「天空のイリュージョン」”
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《追伸》
毎年一回くらいは、夏の夜、庭の芝生に寝転がって星空を見上げています。
星の世界に想いを馳せ、宇宙の誕生から将来の運命などを考えていると、ついつい、ちっぽけな人類のことなどを超越して、自分がスターチャイルドになり銀河宇宙を旅している・・・なんてこと、よくあります。
最近、心配でしょうがないのが、あと30億年でアンドロメダ銀河と衝突して消滅してしまうこの天の川銀河のこと。
当然、太陽系も地球も破壊されてしまうので、もしも人類の子孫が生存していたとすれば、生き残るためには銀河を脱出しなければなりません。
でも何処に行ったらいいんでしょうね?
そもそも、超銀河旅行なんて可能なのか?
ところが、それを可能にする究極の省エネルギー宇宙航法が“イオン推進エンジン”だというのです。
そして、その“イオン推進エンジン”が、今回ご紹介した探査船「はやぶさ」に初めて搭載されました。
軌道衛星の度重なる打ち上げ失敗ばかりがマスコミに取り沙汰されますが、もうちょっと公平な視点で報道すべきじゃないかと、星を見上げながらブツブツ怒っている・・・最近の僕、ちょっとアブナイおじさんになっている気がします(笑)
では、また次回のanother
world.で・・・See
you again !
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ザ・ナイン・プラネッツ (大きさの比較・・・意外と見たコト無いでしょう?) |
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be continued⇒ “Episode15 coming soon!
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