その65
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  GOD Bless You (詩:葉羽)

 3.11・・・
 あの日から 世界が変わった
 ほんの小さなことで 心が揺れ動く

 とても 涙もろくなった
 気が付けば 車を運転していて
 涙を流している

 この心は どこへ行ってしまうのか
 まるで どこかの忌まわしい
 パラレルワールドに迷い込んだようだ

 “心まで奪われてたまるか”
 釜石市の「復興の狼煙」の
 ポスターを見て涙が止まらなかった

 3.11・・・
 あの日から風景の色が消えた
 GOD Bless You. GOD Bless You.

 目の前の景色は
 去年と変わらないはずなのに
 夥しい放射線で満たされた
 それはあまりにも美しい地獄

 福島第一原発の
 水素爆発が起きた後
 身重の娘を会津へ疎開させた

 年老いた母も連れて行こうとした
 でも彼女は言った
「病院の父ちゃんを置いては行けない」

 もしかすると
 これが今生の別れになる
 心の中で そう覚悟をした

 3.11・・・
 あの日から世界の音が消えた
 GOD Bless You. GOD Bless You.

 小康状態を迎えた頃
 実家に戻ってみた
 退院した親父は寝たきりになっていた

「参ったね 今年の人事異動は凍結だって」
 努めて明るく話した

「お前・・帰ってこれないのかい?」
 母は見せたことのない表情で
 絶望したように言った

 自分の軽率さを恥じた
 老々介護が どれほど大変なものか
 その時はまだ 理解していなかった

 3.11・・・
 あの日から風の匂いが消えた
 GOD Bless You. GOD Bless You.

 仲間たちやその家族に
 多くの犠牲者が出ていた

 次々と舞い込む弔事の報せ
 彼らの無念を思い 天を仰いだ

「仕事を休んででもボランティアに行きたい」
 そう言った職員たちを送り出した
 彼らの故郷は 南相馬だった

 神主でもある一人は
 悲しみを隠して
 数多くの葬儀を執り行った

 もう一人の実家は原発20キロ圏内
 かけがえのない
 思い出への道は閉ざされていた

 3.11・・・
 あの日から食べ物の味わいが消えた
 GOD Bless You. GOD Bless You.

 4月の声を聞くと
 気丈な妻が 過労と心労で倒れた
 彼女は ひたすら娘の身を案じていた

 そして程なく
 母が脳梗塞で急死した
 寝たきりの親父は 妻の危急に
 気づいてやることさえ叶わなかった

 いったい何なんだ
 この悪夢のような世界は

 3.11・・・
 あの日から陽差しの温もりが消えた
 GOD Bless You. GOD Bless You.

 和合亮一さんの「詩の邂逅」を読んだ
 涙もろくなったと
 気づけば泣いていると

 そうだ 誰もが同じ思いだ
 一人ではないと気づいた

「福島で生きるということ」
 娘はその決意を文章にしていた
 “母”の強さを知った

 FUKUSHIMA
 このロクでもない 素晴らしき故郷
 愚痴を言い合っても仕方がない

 FUKUSHIMA
 このロクでもない 素晴らしき故郷
 ここで生き ここで死んで行こう

 FUKUSHIMA
 このロクでもない 素晴らしき故郷
 せめて子供たちの未来に幸あれと

 GOD Bless You. GOD Bless You.

 GOD Bless You. GOD Bless You.

Poem by 葉羽
 MP3 by Blue Piano Man “Novenber Girl”
  Photo by 金澤文利 “南相馬市/2011.5.9”
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