こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。
史上最高にセクシーで、
史上最悪の相性の、
史上最強のスパイコンビ、誕生。
11月15日の日曜夜、ガイ・リッチー監督の『コードネームU.N.C.L.E.』をケイコと観てまいりました。
『007』のシリーズがあり、トム・クルーズの『ミッション・インポッシブル』があり、どうして今まで無かったのが不思議というくらいの『0011ナポレオン・ソロ』リメイク映画です。
しかあしっ! ・・・これがただのリメイク映画ではなかったのです。
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コードネーム U.N.C.L.E.(アンクル)
(C)2015 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved
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ナポレオン・ソロ(ロバート・ヴォーン)とイリア・クリアキン(デヴィッド・マッカラム)のスパイ・コンビが主人公となる「0011ナポレオン・ソロ」は、1966年から1970年まで日本テレビ系列で放映されたTVドラマ。
ニューヨークに本拠を置く国際スパイ機関“United Network Command for Law and Enforcement”(略してアンクル)の秘密諜報員で、ソロは米国出身のちょっと気取ったプレイボーイ・スパイ、対するイリアはソ連出身のクールで寡黙なスパイ。(サラサラ金髪でちょっと中性的)
この水と油のようなコンビを上司のアレキサンダー・ウェーバリーが上手く使って宿敵の国際犯罪組織スラッシュの野望を打ち砕くというストーリーです。
この頃僕は中学生でございましたが、1964年の東京オリンピックを挟んで日本は高度成長期、巨人・大鵬・玉子焼きが時代の気分であった頃、「ビートルズかナポレオン・ソロか」と並び称されるほどの超人気番組でした。
もちろん、007のジェイムズ・ボンドやマカロニ・ウエスタン、加山雄三の若大将も時代のアイテムでしたけれど「ナポレオン・ソロ」は浸透度が違う。だって、毎週放映ですからね♪
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「0011ナポレオン・ソロ」
(C)2015 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved
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で、今回の「コードネーム…」ですが、事前情報を極力入れないようにしている僕は“これはアンクルをモチーフにした全く新しい設定の現代スパイ映画だろう”と予想したのです。
映画を見始まってすぐに分かりましたが、半分は正解・半分は不正解・・・つまり、現代ではなく1960年代の冷戦時代をベースにした話だけれど「0011」とは無関係~だって主人公はCIAのエージェントでしたから。
何故、そのようにミスリードされられたか?
これはもう確信犯と言ってよいと思いますが、主人公のCIAスパイの名前が「ソロ」であることを伏せたままストーリーが進行するからです。
ですから、主人公の名前が「ソロ」と呼ばれたシーンでの僕の驚きようは半端ではありません。
えっ、コイツがナポレオン・ソロ!? やられた~! …でも待てよ。何でCIAのエージェント? タイトルが「コードネームU.N.C.L.E.」なのに!??
謎の解決は新たなる謎を呼び、その本当の結論はラスト・シーンの最後のセリフまで持ち越されるのです。
「やられた~!」・・・何たる(嬉しい)たくらみ。
よくよく考えてみれば、「0011 ナポレオン・ソロ」の一番有名な写真(上↑)と今回のポスター(右→)の二人の位置関係、とても似てたんですけどね・・。
・・・そんな一筋縄では行かない、企みに満ちた本編の内容は?
1960年代のアメリカとソ連の東西冷戦時代、もう一つの不穏な勢力がありました。それは、第二次世界大戦で敗北したナチス・ドイツの復活を目論む残党です。
ベルリンが“鉄の壁”で東西に分断されていた1963年、原子爆弾の研究をしていたドイツの原子物理学者ウド・テラーが行方不明となります。
ウドの原爆製造の知識が悪用されるのではないかと恐れた米国は、CIAのナンバーワン・エージェントと目されるスパイ(実はナポレオン・ソロ)に、ウドの発見と保護を命じます。
手がかりとなるのは、ウドの一人娘であるゲイビー・テラー(アリシア・ヴィキャンデル)~今は東ベルリンで車の整備工をやっている女性でした。
早速、東ベルリンに潜入し、ゲイビーと接触するソロ(名前はまだ明かされない)。首尾よく彼女を説得し、西側へ脱出させようとしたまさにその時、ソ連の諜報機関KGBの屈強なスパイが立ちはだかります。
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ゲイビー・テラー(アリシア・ヴィキャンデル) (C)2015 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved
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で、この金髪・巨躯のソ連スパイ、鬼のように強い。
ゲイビーに運転させたカーチェイス中に、密かに車を降りたソロに背後から銃撃されて車ごと大破するのですが、やっつけたと思ったその炎の中から立ち上がってくる。うむぅ・・恐ろしい。まるでターミネーターのようだ。
しかも、急アクセルで逃走するソロ&デイビーの車を何と『走って』追いかけてくる!(やっぱ、液体ターミネーターのT-1000だわ。)
それだけじゃない。あっという間に追い付いて車の背後に取りすがると、今度は、車を『引っ張って』止めようとする!(なんだ、コイツは!?)
やがて、CIAの仲間が西側の壁の向こうに助けに現れ、車から矢尻付のロープを東側ビルの上層階に射出。ソロ&デイビーは滑車の要領で空中を西側に脱出するのですが、ここでも鬼の形相のソ連スパイが無理やりロープを伝って追いかけてくる。いやぁ・・悪夢に出てきそうな追い込みです。
一足先に着地したソロが仲間に向かって叫ぶ。「車をバックさせるんだ!」
あれよあれよとロープはたわみ、憐れソ連のスパイは川の中央で宙吊りとなって地団太を踏む。(いえ、踏めません。空中なので。)
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ナポレオン・ソロ(ヘンリー・カビル) (C)2015 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved
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この「宙吊り」シーンに見られるように、状況は切迫してるのにどこかコミカルなのが「ナポレオン・ソロ」シリーズの持ち味。
カーチェイスのシーンでも、車がまるでダンスでも踊るように二台繋がってスラロームしてみたり(実際、横に繋げて撮影した)と、オシャレな映像にこだわっています。
極めつけは、逃走後、ソロが上司とトイレに入ると、そこにもくだんのソ連スパイが登場。(こんなトコまで追っかけて来るのかい!?)
ソロとソ連スパイがトイレの壁を破壊しながら大立ち回りをするのですが、その後ろで、上司が『どこ吹く風』とオシッコを続けてたり(笑)
そこに新手が登場。今度はソ連側の上司のようだ。あれ?何やら上司どうしが挨拶を交わしている・・。
「ちょっと待て。協力しあう前に殺し合ってどうする?」
「へ!?」
「紹介しよう。今度一緒に仕事をしてもらうKGBのイリア・クリアキンだ。」
「ええ~!」
・・・と、記憶が正確ではありませんが、だいたいそんな進行。
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ナポレオン・ソロとイリア・クリアキン
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ここにくるまでにCIAスパイの名前が「ソロ」と呼ばれるシーンがあって、「なにぃ!この主人公って、ナポレオン・ソロぉ!?」と仰天したのですが、てっきり仇役と思っていたソ連の大男がイリア・クリアキンと知って二度びっくり。
こんな『不意打ち』の感動は、事前に余計な情報を入れなかったおかげ。あらかじめストーリ-をチェックしていたら、この二人に関する出自が解説されているのでサプライズは期待できなかったでしょう。
まあ、中性的魅力のデヴィッド・マッカラムと屈強な大男であるアーミー・ハマーが同じ「イリア・クリアキン」役と思えなかったこともありますが。
この映画の日本語タイトルは『コードネームU.N.C.L.E.』ですけれど、原題を見ると『The Man from U.N.C.L.E.』とあり、これはTVドラマ『0011 ナポレオン・ソロ』と同じ。
そこを確認すれば、主人公が当然ナポレオン・ソロなのを想定できたはずですが、秘密組織アンクルではなくCIAのエージェントとして登場してくるので混乱させられました。
待てよ・・ならばタイトルにある「U.N.C.L.E.(アンクル)」はどうなっちゃってるんだ??
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ナポレオン・ソロとイリア・クリアキン
(C)2015 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved
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やがて、ゲイビーの叔父であるルーディーが、ナチズムの隠れ信奉者である造船会社社長アレクサンダーとその妻ヴィクトリアの元に居ることが判明。どうやらゲイビーの父、原子物理学者のウドは、造船会社に監禁されて原子爆弾の開発に当たっているらしい。
核兵器の拡散を阻止するためCIAとKGBは手を握り、それぞれの最強エージェント、ソロとイリアを組ませてウドの奪還と研究データの破壊を目指すことに。
イリアはゲイビーと夫婦を装い、またソロは古物商に身をやつして、それぞれローマのネオ・ナチ本拠(実質的指導者は妻のヴィクトリア)へと潜入を図ります。
ところが・・・ゲイビーは何故か、ソロとイリアの正体をヴィクトリア側にリークし、ソロは囚われの身に。一方のイリアは必至の思いで脱出を図る。・・・いったい何故!?
ソロはマッド・サイエンティストと化したゲイビーの叔父ルーディーの手によって、高圧電流を流される実験台に。
さて、ソロとイリアの運命は?そして、ゲイビーの裏切りは何故?はたまた原作でソロとイリアの上司であるウェイヴァリーはどこで登場するのか!?
(実は既に登場していたりする(笑))
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敵のボス、ヴィクトリア・ヴィンシゲーラ(エリザベス・デビッキ)
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もともとこの映画のナポレオン・ソロの役はトム・クルーズが演じる予定でしただったのです。
ところが『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』の撮影時期と被ったため、ヘンリー・カビルが大役を射止めたもの。
ヘンリー・カビルは英国海峡ジャージー島出身の英国俳優。2005年に行われた『007』新シリーズのボンド役オーディションに最終選考まで残りましたが、「若すぎる」という理由でダニエル・クレイグに決定。(惜しかった!)
彼の出世作と言えば、スーパーマンの“ビギンズ”もの『マン・オブ・スティール』(2013年)のクラーク・ケント役。
興行は成功裡に終わり、あくる2016年春には続編『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』が公開予定となっています。
(ダンヒルの「フレグランス」のイメージモデルも彼が務めています。)
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イリア・クリアキン(アーミー・ハマー)
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一方のイリア・クリアキンを演ずるアーミー・ハマーは、2010年の公開映画『ソーシャル・ネットワーク』の双子役でご存知の方も多いでしょう。
彼は、2007年にジョージ・ミラー監督に指名され、『Justice League: Mortal』でバットマンのブルース・ウェインを演じましたが、撮影は途中中断されたままになっています。(あらららら・・)
また2013年にはディズニー映画『ローン・レンジャー』の主役として、相方トント役のジョニー・デップと共演。
この映画、朱雀RSの「泣いてたまるか!【ローンレンジャーに負けた日】」で取り上げたところですけれど(笑)、興行的には大失敗。
最低映画賞であるゴールデン・ラズベリー賞の5部門にノミネート、見事「最低前日譚・リメイク・盗作・続編賞」を受賞するという不名誉な記録を残しました。
こんなアクシデントの多い不幸なキャリアですが、今回のイリア役の成功で大きく飛躍してくれることを期待したいですね。
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「0011ナポレオン・ソロ」
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ところで、TV版のナポレオン・ソロが終了後、スピン・オフ作品『0022 アンクルの女』でエイプリル・ダンサーが登場しましたが、実は十数年後の1983年に本編の続編『帰ってきたナポレオン・ソロ』が作られているのです。
このドラマでの見どころは、ソロが美女を連れだってカーチェイスを行うシーン。危機に陥った場面で、突如「JB」ナンバーのアストン・マーチンが登場。
乗り込んでいたのは、何と『女王陛下の007』で2代目ジェイムズ・ボンドを演じたジョージ・レーゼンビー!
颯爽とソロの危機を救うと、「困った時はお互い様」というセリフを残して去ってゆく・・(笑)
いやぁ・・こういうお遊びができるのが、ナポレオン・ソロ・シリーズの真骨頂と言えるでしょう。
あのシリーズは、日本側のスタッフも頑張ってたよね。
どゆこと?
ソロの声優が矢島正明で、イリヤが・・何だっけあのカッコいい声の人?
ああ、野沢那智ね!
そうそう。でもってわざとオカマっぽい日本語訳付けたりして。
!!!
そう言えば、ソロとイリアはお互いを「おたく」(※現在のニュアンスではない)と呼び合って、到底スパイ映画とは思えない独特の雰囲気を醸し出していたっけ。
いやぁ・・流行りましたよ、当時の中学校で。「最近どう、おたく。勉強はかどってる?」なんて(笑)
『帰ってきたナポレオン・ソロ』は、その後、デヴィッド・マッカラムが「もう歳で身体が動かない」と固辞したこともあり続編はありませんが、ドラマのラストシーンでは、次の任務が告げられるところで終わっています。
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ヒュー・グラント(ウェイヴァリー役)
(C)2015 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved
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さて本編では、ソロとイリアの活躍によってネオ・ナチグループの野望を阻止。
任務完了後、イリアは原爆研究のデータを入手するとソロに銃口を向けます。
全く動揺しないソロ。そしてイリアに「その前に、これだけは取っておけ」と何かを投げます。
それは・・・任務中途で(とある事情で)奪われていた、イリアが最も大切にしていた父の遺品の腕時計。
イリアは何も言わず銃を降ろし、研究データを破壊する・・。
いいなぁ、こういうシーン。任務よりも男の友情を優先する。荒唐無稽と言わば言え。いいんです、これぞ『0011』の正当なDNA。娯楽映画ですから(笑)
ところがっ!!
それさえも織り込み済みだったとばかり現れた英国MI6のウェイバリー(ヒュー・グラント)。(※途中から登場していたある人物!)
二人を裏切ったかに見えたゲイビーも、実はウェイバリーの部下でMI6のエージェントだったのです。(おっとっと)
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ウェイヴァリー(ヒュー・グラント):右
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ウェイバリー「俺たちに新たな任務だ。コードネームはU.N.C.L.E.。」
・・・ここで終わり。
ようやく合点が行きました。つまり今回の映画は、アンクルが結成される『エピソード・ゼロ』の話だったことが。
どうです、この終わり方。スタイリッシュだと思いませんか?
さすが『シャーロック・ホームズ』を撮ったガイ・リッチーと唸らせる本作。
60年代のファッション、街並み、小物まで徹底的にディテールにこだわっています。
素晴らしい完成度。是非、続編を期待します。
/// end of the “cinemaアラカルト170「コードネームU.N.C.L.E.」”///
(追伸)
岸波
そうそう・・最初、気づきませんでしたが、映画中にイングランドのデビッド・ベッカムが出演しているそうです。
映画の前半でイリアがKGBの上司から作戦の詳細を映写機の映像で説明されているシーン。
なんとその映写技師がベッカムだったのです。(気づかなかった!)
徹底的にお遊びを入れてくれてます。素晴らしい。
最後のセリフもアンクルの「エピソード・ゼロ」であることを明らかにすると同時に、「帰ってきたナポレオン・ソロ」のラストシーンと被せてあるところが秀逸。(気づく人、あまり居ないだろうな・・)
はたまた、この女性エージェントのゲイビーも、実は後の「0022 エイプリル・ダンサー」であったなどというオチが付けば最高なんですけれどね。
ということで、日本での公開記念イベントも開催され、あの「とにかく明るい安村」がナポレオン・ソロに扮して登場しました。
最後に、そのオマケ画像を(爆)
では、次回の“cinemaアラカルト”で・・・See
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