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「春の吹く場所で」(TAM Music Factory)
 

 

【一夜明けて2005.04.30:’試乗会’

 とあるスキーメーカーから招待されていた。

 2006シーズンのニューモデル試乗会がある。

 来年の滑りを大きく左右するので、個人的にはとても重要なイベントだ。

  飛ばすぜこの道どこまでも・・・・・山形へと急いで向かった。


 ゲレンデに立てたのは、予定を3時間程過ぎた頃だった。

 10モデル程を試す予定だったが、お目当てのモデルのみで2グレードを試乗してやめた。

 雪面からの微細なプレッシャーが感じられない。

 今日はだめだ!

 結局、ブランドイメージだけで来期使用のモデルを決めた。

 予定より、二時間程早く、僕は山形を後にした。

 

【二日目2005.04.30夕刻:’確認’

 ふと、僕はあることに気がついた。

 MIZO画伯への絵の注文・・・額縁・サイズ・・・・発注したことにならない!

 MIZO画伯の画廊へと向かった。

 ああ、やっぱり冗談で終わっていたみたいだ。

 ’ちわ、お客様だぞ〜’

 ”サイズは○号で、額はひたすら絵を邪魔しないシンプルな奴ね

 ・・・額はオマカセで御願い!”

 「判った、納期はX月位かな!」

 ”うん、よろしく!”

 ”ミゾォ、彼女のお店教えて・・・”

 「ああ、もちろん。」

 ”こんな、冗談みたいな話から本当の駒が出てくるのかなぁ???”

 「う〜ん、わしにはなんとも言えん!」

 「まぁ、やるだけやって見るのもいいんじゃない!」

 ”じゃ、よろしくね!”

 階段をトントンと下りながら・・・・

 ”いったい、なにやってんだろうなぁ、俺???”

 MIZO画伯が微笑みながら、見送ってくれた。

 

【二日目2005.04.30夜半:’繁華街のハンパ女’

 山以外を彷徨うのは久しぶりだ。呼び込みのお姉さんやらお兄さんが沢山タムロしている。

 ああ、なんだか懐かしい匂い、昔馴染んだ空気だ。


 ギィ〜

 「いらっしゃいませぇ〜」

 はい、いらっしゃいましたぁ。

 派手な人形達のお出迎えだ。

 取り分け彼女が際立って光っている。

 ’もう、帰ったんだと思ってた!?’

 ”・・・・・・・・”

 ’話易いように、こっちに座って!’

 ”また、来れるようにボトル入れて!ああ何ヶ月有効?”

 ’また来るなら取っとく!!!’

 ”別人みたいだなぁ〜”

 ’別人です!’

 しばらくお店の成り行きを観察している。

 MIDY、凄いや君!

 ハイパワーなパフォーマーだ。

 しっかり、この世界で生きている。

 なんだか、立ち去りがたくて静かに飲んでいた。

 あちこち、テーブルを回っては、時々彼女は戻って来る。

 ’ねぇ、アタシを落としに来たんでしょ?’

 (へっ???夢か現か確かめに来ただけなんですけど・・・・・)

 (下心が無いって言えば、嘘になるもんなぁ!?)

 ”あっ、ああ、もちろん!!! 良く判るなぁ!?”

 ’そりゃぁ、判るさぁ!!!’


 駄目だよMIDY!

 PROはそんな会話はしないんだよ!

 急速に醒めて行く自分を感じていた・・・・・・

 ボトルが空く頃

 ’あ〜頭痛いぃ〜、飲み過ぎちった!’

 ”ダイジョブかぁ???”

 店が引けて、二人でお店を後にした。

 ’飲みに行くよ!’

 ”オイオイ、まだ飲むのかぁ???”

 ’アッタリマエジャン!!!’

 ”まるで、繁華街のハンパ女だなぁ!!!”

 二人でクスクス笑った・・・・・・・

 

【三日目2005.05.01深夜〜早朝:’100$’s LOVER’

 二人でラーメンを食べた、彼女の横顔が美味しかった!

 二人でカクテルを飲んだ。

 ’XXXXさんはねぇ・・・・・・・’

 なんか評論してやがる。

 バァカ、そんなこたぁ本人が一番良く判ってるさ!

 よけいなお世話!


 最後に入ったお店で、ウィスキーを飲みながら彼女は疲労にスウスウ寝込んでしまった・・・・

 僕はお気に入りの猫のトレーナーをかけてあげて、その天使のような寝顔を見ていた・・・・・・

 時間よ止まれなんて思っちまったい!


 mid-night angel の寝顔に僕は思った。

 ああ、俺はこの娘にはかないっこないやぁ〜

 なんて、パワーに満ちた歴史を刻んでいることやら・・・・

 まして、俺の手におえるシロモノでもなさそうだし、やっぱり、夢だったことにしよう・・・・・・・


 (恋をしました・・・・・
 なんだか二日ぽっちで終わっちまったみたいです。)


 退屈そうな僕に、マスターがピアノを弾いてくれた、なんだか、ジャズの有名なナンバー。

 ふと、目を醒ました彼女が

 ’ねぇ、もう帰っていいよ・・・・’

 それが、オフだよ、もう消えてって意味なのか、御免ね突き合わせてって意味なのか、あるいは、それ以外か僕には判らない。

 もう、どうでもいいや、僕は彼女の生き方を愛したから・・・・・・


 だけどね、MIDY、そんなに命を削る程、頑張らなくていいんじゃないかぁ?

 再び、寝込んでしまった彼女がやっと目を醒ました。

 フニフニ・・・

 ”マスタがピアノ弾いてくれた。!”

 ’良かったじゃん!’

 彼女は僕がピアノの音が好きなのを知っている・・・・・


 TAXIで彼女を家まで送って行った。

 猫のトレーナーを奪い返して・・・・BACK-WINDOWに小さくなっていく彼女を見ていた・・・・・・・・・

 ’100$’S LOVER’

 こんなに愛しているけれど
 恋しいオマエにゃぁ 判るまい

 酒の取り持つ縁だから
 仕方がないかもしれねぇが

 出来ればオマエと何時だって
 一緒に暮らしていたいけど
 全ての男がオマエにゃ
 親戚みたいなものだから

 愛しいオマエに会う為にゃ
 ちょっとの酒代を払うだけ

 こんなに愛しているけれど
 恋しいオマエにゃぁ 判るまい

 愛しいオマエに会う為にゃ
 ちょっとの酒代を払うだけ

    FROM HIDEKATU KIMURA
    IN 憂歌団

 100ドルぽっちを握り締めて彼女の元気な顔を拝みに行く習慣がしばらく続くかもしれない・・・・・・

 

【三日目2005.05.01朝:’エピローグ’

 玄関で里帰り中の姉が待っている。

 「ヒデユキちゃん、なにしてたの???」

 ”うっせぇなぁ!ガキの頃みたいに悪さしちゃいねぇよ!”

 ”なぁ、姉ちゃん頼むから、そのチャン付けやめねぇ、大人なんだからぁ!”

 ”飲み屋にきれいなオネエチャンが居てさ、帰れなくなっちまっただけだよ!”

 姉とは比較的仲が良い!


 聞きつけた兄が言う。

 「馬鹿かぁ、オマエは!?」

 「薄暗い店でみるから綺麗なんだぞ!」

 「お天道様の下で、スッピンで見たらきっとバケモンばっかりなんだぞ!」

 ”・・・・・・・・・”

☆ 違うよ兄ちゃん!

 僕は今、彼女の全てを見てきたつもりでいるんだよ! ほっといて!

 あれっそういえば、あのつかの間の睡眠は、危険回避の寝たふりだったのかなぁ???????

 まっ、どうでもいいかぁ!!!!


 三日間48時間の内、実に36時間を彼女と過ごしたことになる。

 外野も沢山居たけれどね・・・・・・


 MIZO画伯にお願いした、彼女の星の絵はきっと彼女の手に届くことなく、僕の書斎を飾る事になるだろう。

 そして、彼女のTELPHON-NOも僕の携帯に打ち込まれる事はなく机の片隅にMEMOのままずっと眠ってしまう事だろう。

 いったい、いつになったら、本当の恋が出来るのだろう?

 まぁいいかぁ!なんとかなるさ、Let it be!

(BY 朱雀RS 2005.6.4)

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