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 #241 憂い(相田みつを)

by 葉羽
Photo by 大和伸一 "磐梯高原"
BGM by 甘茶の音楽工房 "忘却のパヴァーヌ"
Site arranged by 葉羽

 

 むかしの人の詩にありました

  君看よ双眼のいろ
  語らざれば憂い無きに似たり

 憂いがないのではありません
 悲しみがないのでもありません
 語らないだけなんです

 語れないほどふかい憂いだからです
 語れないほど重い悲しみだからです

  人にいくら説明したって
  全くわかってもらえないから
  語ることをやめて
  じっとこらえているんです

   文字にもことばにも
   到底表せない
   ふかい憂いを
   おもいかなしみを
   こころの底ふかく
   ずっしりしずめて

  じっと黙っているから
  まなこが澄んでくるのです

 澄んだ眼の底にある
 ふかい憂いのわかる人間になろう
 重いかなしみの見える眼を持とう

  君看よ双眼のいろ
  語らざれば憂い無きに似たり
   語らざれば憂い
    無きに似たり

  みつを

(※相田みつを『人間だもの』より)

 

 

 

葉羽 「憂い」について

 今年の「人生カルタ2025」で、アンブレラあつし氏の詩に「語れないこと」というのがあります。例えば自分の子供を失った哀しみは、これに匹敵するものではないかと思います。この「通信」ワールドの中にも、そうした経験を乗り越えて執筆している人たちがいます。でも普段はその「想い」を心の奥底に封印し、明るく付き合っています。本当に「強い」人たちだと思います。
 なお「君看よ双眼の色・・」は江戸時代の臨済宗中興の祖、白隠慧鶴禅師が残した名句です。


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