むかしの人の詩にありました
君看よ双眼のいろ
語らざれば憂い無きに似たり
憂いがないのではありません
悲しみがないのでもありません
語らないだけなんです
語れないほどふかい憂いだからです
語れないほど重い悲しみだからです
人にいくら説明したって
全くわかってもらえないから
語ることをやめて
じっとこらえているんです
文字にもことばにも
到底表せない
ふかい憂いを
おもいかなしみを
こころの底ふかく
ずっしりしずめて
じっと黙っているから
まなこが澄んでくるのです
澄んだ眼の底にある
ふかい憂いのわかる人間になろう
重いかなしみの見える眼を持とう
君看よ双眼のいろ
語らざれば憂い無きに似たり
語らざれば憂い
無きに似たり
みつを
(※相田みつを『人間だもの』より) |