◆須磨に嵐や 笛の音そ
今宵わ歌も 消え暮れて
舵を納めん 波千里
平家は露と 亡ひぬる
◆我は海より さすらいて
潮にまかせん 櫓をつきぬ
笛の音遠く 妙なるや
夢も恋路へ 遊ひけむ
◆春 若芽色よく萌え
夏 沼辺で魚を獲り
秋 虫の音澄んだ美空
冬 墓地に苔やせさびれ
◆雪の故郷(ふるさと)お嫁入り
田舎畦道(あぜみち)馬つれて
藁屋根を抜け 田圃越え
葉末に白く 陽も添へむ
◆鳥啼く声す 夢覚ませ
見よ明け渡る 東を
空色栄えて 沖つ辺に
帆船群れゐぬ 靄の中
◆色は匂へど 散りぬるを
我が世誰ぞ 常ならむ
有為の奥山 今日越えて
浅き夢見し 酔ひもせず |