◆あなたと過ごした日々は小さな旅だった 空っぽの花器の美しいこと
◆乱丁のある文庫本抱きしめる 愛すよたったひとつの傷を
◆ラブソング以外の愛もあるんだよ 鳩になってもきみが分かるよ
◆ほんとうにあたしでいいの?ずぼらだし、傘もこんなにたくさんあるし
◆わたしもう、夏の合図を待っている 冬至の長い夜からずっと
◆へたくそなハンドサインを読み解くよ 来世で、きみは、枇杷に、なりたい?
◆平日の明るいうちからビール飲む ごらんよビールこれが夏だよ
◆フリージアナンキュラスを左手に、マクドナルドと鍵を右手に
◆開かない花だとしてもまっすぐな茎で私の元にきたこと
◆本当に正しかったかわからない決断たちよ おいで、雪解け
(岡本真帆歌集『水上バス浅草行き』・『あかるい花束』より) |