◆今、シミュレーション・ゲームの『ファイアーエムブレム風花雪月』をやっているが、その主人公は中世の士官学校の教師だ。その教師が生徒を指導するにあたって「褒めて伸ばす」と「叱って伸ばす」の二つの手法が出て来る。
◆思い出されるのは『巨人の星』の星一徹のスポ根教育で、息子飛雄馬を決して褒めることなく徹底的に叱り飛ばし、飛雄馬は「なにくそ」と奮起して巨人の星まで昇り詰める。確かにそういうタイプの子供も居ない訳ではないが恐らくは少数派で、世の多くの親は「褒めて伸ばす」という考え方に立っているのではないか。
◆しかし、1990年代に「褒めて伸ばす」が逆効果になるという興味深い心理学実験が行われている。コロンビア大学のミューラーとデュエックによる研究だが、実験内容を簡単に説明すると以下のようなものだ。
①10歳から12歳までの子供たち約400人に「簡単なテスト」を行い、その成績に関らず全員に「貴方は80点をとった」と伝える。
②その後、子供たちを三つのグループに分け、以下のようにコメントを伝える。
グループ 1:「本当に頭がいいんだね」と褒める。
グループ 2:「努力のかいがあったね」と褒める。
グループ 3:何のコメントもしない。
③時間をおいて再度テストを行いグループごとの成績を評価する。
◆その実験結果は予想を裏切るもので、努力を褒められたグループ2は最も成績が伸びたが、能力を褒められたグループ1は何のコメントもしないグループ3よりも成績が落ちていたのだ。
◆この実験結果は「褒め方」が重要だということを物語っている。「能力」を褒められた子供たちは「慢心」に陥り「努力」を怠るようになるということだ。ささいな違いに見えて見過ごされがちだが、世の親たちにとっては大きな警鐘となるのではないか。 |