◆いかに召します わが人生のつづら折れ もはやほとけとなりし君はも
◆にんげんに鈍なわたしを 耐えゐし君だったかしれず いや、さうだった
◆悲しみといふ名の猫は獰猛で 抱ふれば百本の 薔薇となりたり
◆よろこんで 子恋小路の迷ひびと 狂ってしまってもよかったんだよ
◆狂はずに 子恋小路の果てに着き 誰も掲げぬ迎へ提灯
◆あからひく 膚はひかりに照らされて ラブホテル独り出るやうに 母
◆月影のあえかに君を見守らん 道はこの道 暗夜なれども
◆男の子産み 大切に育てし後 すずしろの断罪に母は遭う
◆仙川に この子投げたし殺したし されど誰にも殺されたく無し
◆歌詠めば 想ひでのひとと手をつなぐ 世はそれぞれの旅寝の夢に
・・・(辰巳泰子歌集「仙川心中」より) |