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 #099 かくも長き闘い

by hasimoto
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◆地球規模で流行するような伝染病も最初はごく限られた地域のものだったろう。それが人の移動などで次第に広がる。天然痘ウイルスの故郷はアジアらしい。

◆紀元前12世紀に中国で流行したという記録がある。それがインドからシリアを経由してヨーロッパに入り込んだのは6世紀と言われている。さらに十字軍の遠征がこの電線力の強いウイルスをヨーロッパ全域へ運んだ。

◆中世のヨーロッパでは全人口の三分の二を死亡させるほど猛威を振るう。16世ににはスペイン人征服者からの感染によってメキシコ先住民のアステカ族が三百万人も犠牲になった。日本には奈良時代に既に入り込んでいた。

◆この猛烈ウイルスもジェンナーの種痘法によって次第に鳴りを潜める。1977年ソマリアで感染者の報告されたのが最後。世界保健機構は80年に天然痘の絶滅を宣言した。人間が撲滅した最初の伝染病ウイルスだった。

◆おかげで今の子供たちの腕には種痘の跡がない。最後の天然痘ウイルスがロシアのモスクワと米ジョージア州アトランタの研究機関で液体窒素の中に保存されている。ウイルスがテロなどに使われる心配もあるため、WHOが撲滅を呼びかけていた。

◆科学者の間でも保存と抹殺に意見が分かれた。「保存派」は将来天然痘ウイルス研究の必要性が出てくるかもしれないと主張した。そのウイルスが処分されることに決まった。長く人類を苦しめたウイルスが完全に消滅する。

 

 

 

葉羽 「かくも長き闘い」について

 この章をもって「人生ノート」は終了し別編に繋がるのですが、今回のリニューアルでは、全章を「人生ノート」として連番編成することにいたしました。ということで、このまま継続します。


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