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 #097 一筆啓上

by hasimoto
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◆「お母さん、雪の降る夜に私を生んでくださってありがとう。もうすぐ雪ですね。」大阪・天根利徳さん 広く「母」への手紙を募った福井県丸岡町の「一筆啓上賞」入選作の一編だ。

◆この賞は、徳川家康の家臣本多重次が妻に送った有名な手紙「一筆啓上 火の用心」にちなむ。簡明な手紙文という条件に、三万を超す応募があり、十編の入賞が決まった。

◆「絹さやの筋をとっていたら無性に母に会いたくなった。母さんどうしていますか。」東京・中村みどりさん

◆「桔梗がポンと音をたてて咲きました。日傘をさしたお母さんを思い出しました。」京都・谷本英治さん

◆ほんのささいなことで、ふと母を思う。遠い故郷の母、あるいは、すでに亡くなった天国の母。それぞれに、見事な短編小説のようなさわやかで、感動的な読後感がある。

◆「『私、母親似でブス』娘が笑って言うの。私、同じ事泣いて言ったのに。ごめんねお母さん。」群馬・田口信子さんの一見ほほえましい手紙も、そのお母さんは十年前に亡くなっている。

◆千葉・安野栄子さんの手紙は、同じ苦しみを抱える少なからぬ家族で共感の涙を誘うことだろう。「お母さん、もういいよ。病院から、お父さん連れて帰ろう。二人とも死んだら、いや」

 

 

 

葉羽 「一筆啓上」について

 この最後の一筆啓上「お母さん、もういいよ」を読むと母がクモ膜下出血で危篤になったとき、親父が病院に通い詰めだったことを思い出します。あの時は父も死んでしまうと思うくらいに憔悴していました。その甲斐あってか母は奇跡的に快復し、結果、母の命を奪ったのは5年後の東日本大震災でした。


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