晩秋から初冬にかけて花の少なくなる頃、庭や生垣を彩るのが山茶花である。椿と同じ仲間ながら、やや小ぶりの花は濃厚な感じはなく、清楚な中に一抹の寂しさをたたえ風もないのにはらはらと散る様は、いかにもこの季節にふさわしい。
山茶花は九州や四国に自生する、わが国特産の花木で園芸品種として改良され、愛好されるようになったのは江戸時代である。万葉集や古今集の歌人達は山茶花の存在を知らなかったわけで、もし庭木として植えられていたら、数々の秀歌が歌集を飾っていたことであろう。
ちなみに、山茶花を海外に初めて紹介したのは、かのシーボルトで、学名もカメリア・サザンカ、英語の辞書にもSazanquaとして載っている。
桜をはじめ花の名所は京都や奈良に多いが、山茶花も広く知られてはいないまでも、秋篠寺、大覚寺、詩仙堂と。それぞれに見事な花々を咲かせて、訪れる人の目を楽しませてくれるが、山茶花らしい風情はむしろどこにでも見かける生垣に、やわらかい光を受けてひっそり咲いている姿にあるような気がする。
山茶花を 雀のこぼす日和かな 子規 |