【交通事故減願う「償い」 実話に基づくさだまさしさんの歌 警視庁講習で流す】(2016年12月2日 東京新聞朝刊より引用)
交通違反をしたドライバーなどが対象の講習で、警視庁は、交通死亡事故の遺族と加害者の実話を基に、歌手のさだまさしさんが作詞、作曲した「償(つぐな)い」という歌を聴かせている。
今年六月に始めた取り組みで、受講後のアンケートに応じた約四千六百人の九割近くが「良かった」と答えた。
さださんは「人間の痛み、事故の悲惨さを一人でも多く感じてもらえれば」と話し、忘年会などの酒席が増える師走の安全運転を願う。
(谷岡聖史)
一九八二年のアルバムに収録された「償い」は、交通事故で夫を亡くした、さださんの知人女性の体験が基になっている。
「話を聞いたとき、これを本当の反省というのだ、と感動した」。さださんは本紙の電話取材に、こう振り返った。
歌詞は、過去に男性を交通事故で死なせてしまった「ゆうちゃん」の同僚の視点で描かれている。
ゆうちゃんは、給料の中から遺族に送金を続けていた。七年目のある日、男性の妻から初めて返事が届いた。
ゆうちゃんは思う。「償いきれるはずもないあの人から 返事が来たのがありがたくてありがたくて」
さださんは「許した側に立って詞を作れば傲慢(ごうまん)になり、許された側にすれば何も言えなくなってしまう」と悩み、歌詞ができるまでに数年かかったという。
講習で「償い」を聴いた人は年末までに二十九万人になる見込み。
受講後のアンケートで「事故の悲惨さを再認識した」(三十代男性)、「涙が出た。二度と違反や事故をしないと心から思った」(七十代男性)、「言葉より感情に訴えるものがあった」(六十代女性)などの声が寄せられた。 |