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 Report by MARUYAMA Yoshiko
 Mp3 by H/MIX GALLERY "悠久の絆"
 Site arranged by Habane
 

        

【2011/7/27】 

リレハンメル博物館に到着し、そのことをエギルが受付で伝えると、今朝会ったエイヴィドさんが現れ、館内を案内してくれた。

リレハンメル博物館の敷地

リレハンメル博物館の敷地

 常設展示は、学術的よりはアトラクション的に、ノルウェイの歴史を見せている印象だった。

 まず氷河の大地からのイントロダクションに始まり、原始時代の生活紹介は“洞窟と原始人”のつくりもの…というパターンは日本と同じだ。

 人形の顔が原始人の骨格ではなく、現代のマネキン顔を汚しただけなのは妙だったけれど。

 団体客で混んでいたのと、ここへ来た目的が展示を見ることではないので、ささっと通り抜けた。

 企画展示は、館内の広いオルタナティブスペースで紹介するらしい。今回は、大きな切り絵による作品を紹介していた。

 圧巻だったのが、屋外の展示。起伏のある広大な敷地内には4つの池とそれをつなぐ小川が流れている。

 これらの自然地形はもとからあった環境をそのまま生かしたのではないだろうか。博物館にいるのではなく、どこかの村を散策している気分だ。

池の向こうに農村風景と牛

池の向こうに農村風景と牛

 遠く池の向こうで牛が草を食んでいるのが見える。

 つまり、村や農地の光景を表すために、牛の世話もしているというわけだ。

 家屋も時代に応じて、XX世紀の農村、XX世紀の町並み…という風に家屋の集合体として存在する。

 また、個人の住宅が時代ごとにどのように変化したかを、1920年代の住居、1930年代の住居、…未来の住居、のように1軒ずつ建っていて、玄関から入り、室内を自由に見られるようになっている。

 日本だったら、“XX世紀のコーナー”どまりで、1軒ごとは規模的に難しいだろう。

 ノルウェイの人口に対する国土面積の広さが、このような展示を可能にしているのだろう。

 エイヴィンドさんによると、これらの建築物の周囲の空間で、さまざまな催しや企画が可能だと言う。

(リレハンメル博物館の屋外展示/ある時代を表す町並み。※用あって、現代の車が駐車している。)

 日本での開催も全く白紙の企画なのに、ここノルウェイでどんどん可能性がみえてくるという妙な状況にわくわくしつつ、とまどいつつ、認識のギャップが生じてはいけないので・・

「日本の博物館キュレーターの方が私の企画を支持してくれているけれども、現在は開催の見通しは全く未定であるし、私は館の人間ではないから、互いの館同士の交流を今ここで約束することはできない。

 また、大災害後の復興が最優先の日本および東北において、文化活動資金助成を得ることはかなり難しい。

 それでも私は、この企画実現が故郷の復興のためになると確信しているから、努力を続ける。帰国してからさらに可能性を探り、ご連絡する」 ~と話した。

 彼の専門は、私にプレゼントしてくれた分厚い共著『Living Crafts』でもわかるように、職人技に関する分野らしい。

 この本はノルウェイばかりでなく、日本を含む海外の手仕事も多方面に渡り紹介している。

 彼は、研究調査のために来日したことがあり、さらなる交流を望んでいるようで、かつて日本との交流で助成を受けた基金の情報をあとで連絡すると言ってくれたり、実現のために自分にできることはないか?と尋ねてくれたり。

 エイヴィンドさんの意欲に、エギルも私も、もし両国の博物館同士が協力したら、企画の実現性は高まるし、将来的にも博物館同士の多様な交流が可能になるだろうと語り合った。

  

 私の帰国後に、さっそく届いたエイヴィンドさんからのメールでは、北欧と日本の交流助成情報とともに、ノルウェイの職人が日本を訪ねて、日本の職人との交流ができる機会を望んでいるという内容だった。

 あら? こちらの希望は現代アートがメインの交流なんですけど…。

 そうか、彼が私のポートフォリオを見て「Wow!」なんて感心していたのは、作品をきちんと作り込んだ技術的な部分だったのかも…。

 私の英語は確かに覚束ないけれど、そんなにまで通じていなかっただろうか…?

 確認のメールを送ってみたけれど、まだ返事はない。

        

葉羽

 皆様にお付き合いいただきました現代美術作家丸山芳子さんの「ノルウェイ~制作の日々~」は、今回をもって終了です。

 また、次の作品発表の機会に、この「通信」でお会いできるのを楽しみにしています。ここまでの応援、まことにありがとうございました。

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 フィンランド滞在制作日記
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