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by Maruyama Yoshiko / Site arranged by Habane |
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(丸山芳子)昨年12月から今年の1月にかけて参加した国際展Fresh Windsでの経験を書きとめておこうと思います。
【2016/2/4】<プレートが生まれる島 アイスランド> アイスランドは北海道より少し大きいぐらいの島で、9世紀末~10世紀、無人島だったこの島にノルウェー、スコットランド、アイルランドのケルト人が移って定住したのが始まり。 移民たちは合議による自治を目指し、世界最古の民主議会「アルシング」を開いたそうだ。完全な独立国を果たしたのが1944年と、とても新しい。 一度も軍隊を持たず、大統領は国民が選挙で選び、世界初の女性大統領を生み、世界一の男女平等、そして人口増加中…と、なにもかもフレッシュな印象の国だ。 アイスランドを挟むユーラシア大陸と北アメリカ大陸は「ユーラシアンプレート」と「北米プレート」に乗っかっている。 その間にある大西洋の海底に連なる太西洋中央海嶺という海底山脈からは、今でもプレートがつくられ続けているため、北アメリカとヨーロッパの間は1年間に数センチずつ離れているそうだ。 太西洋中央海嶺の山頂の一部がたまたま海の上に顔を出したアイスランドからも新プレートが生まれ続けていて、放っておいても国の面積が徐々に広がっているユニークな国なのだ。 2つのプレートが常時生まれ続ける、その結末に日本が関係してくる。 生まれた2つのプレートがそれぞれ反対方向に動き、北半球を半周して日本海で再び出会って押し合い、地震を発生しつつ一方が地球の中にもぐりこんで姿を消す。 北極上空から見ると、2つのプレートの境界線上で向き合っているアイスランドと日本は、地球の大地の誕生と終焉の地という関係性がある。 日本周辺のプレート構造は複雑でまだ解明されていない事が多く、ユーラシアンプレートを、さらに分化した説があるようだが、作品ではこの2つのプレート説を採用した。
【2016/2/4】<地球の現象を体感 表現へ> 2011年の震災後、郷里福島が被った事柄から、私は表現の中でその意味を問い続けてきたが、アイスランドと関わりを持ったことで、意識は地球科学的成り立ちに広がった。 アーティスト達との日帰りバスツァーで訪ねたシンクヴェトリル国立公園で、プレートが生まれる現場を見晴らせたことや、壮大なオーロラを何度も目撃できたことから、自分の存在を地球との関係として体感した。 惑星地球の現象のサイクルのなかに生きていることを自然に受け入れられた。ひとつの生命として。 この実感は、都市を歩いても体に残っていて、常時、自分を俯瞰する視線を持つかのようだ。この感覚を、忘れないでいたい。 現地での作品は、このプレートの現象とその上に生きる人間をテーマにした。 開催には、街の中心部にあるメガ・ギャラリーと、海辺の新・旧の灯台と灯台守の家などが会場として使われた。 私は、天井が高く、地球のイメージにふさわしい円形の空間の新灯台を選んだ。 5階層ある空間の中央が階段で貫かれていて、ライトを灯す動力音や階段を上下する足音の反響も不思議な効果音となり、灯台がまるごと楽器のようなのだ。 現地で集めた珈琲豆袋、材木、樹皮、枯れ草、石などを床の半面に配置して、回転軸を中心にゆっくり流れ移動する2つのプレートを表現し、そこに陸地のラインとプレートのラインを描き入れる。 その上に、青く染めた毛糸で北極を中心とする経線を張る。もう一方の半面には、蝶のサナギのオブジェを天井から吊るし、地表に向き合うように配置した。 これは自作で何度も登場した再生のシンボルだ。蝶に生まれ変わるため、静かに体内でそれを準備する姿。(※右の背景画像)⇒ これまでは再生を期す東北の人々を象徴させていたが、アイスランドを体感して、すべてを受容する姿にしたくなった。 生も死も受け入れる姿に。 葉羽 アイスランドのプレートの事、芳子さんのレポートで初めて知りました。遠く離れた国でも意外な部分で繋がっているのですね。
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