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by Maruyama Yoshiko / Site arranged by Habane |
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非日常が日常になったとき、鏡を見るように、人間について気づかせてくれたのが、人間以外の生き物だった。とりわけ、私にとっては卵から蝶までのミラクルな生き様をみせたアゲハだ。 「ギャップダイナミクス」では、ギャップが出現した森の奥で、密やかに営まれている命の現象を表そうと思う。
板橋区立美術館は今、展覧会の狭間の休館日。 自作のテーマはとっくに決めているものの、作品のイメージがまだはっきりと現れてこない。 日程は迫って来る。 そこで、展示空間で、プランの視覚的チェックをさせていただきながら、構想を練ることにする。 観客のいない館内には、蝉の声、揺れる樹々の影、濃厚な夏の緑が押し寄せる。 「ギャップ ダイナミクス」という企画テーマを考えたときには、まだ設定テーマであって、実感を伴わなっていなかった森林生態のイメージが、この空間のなかで生き生きと立ち現れ、符号した。 この林と呼応するサナギという生命を表すことにしよう。
美術館で緑を体感したら、作品の具体的な構想があらわれてきた。 まったく異なる体に生まれ変わるため、体内で起こっている細胞の死と生成を包み込みながら、サナギが静かに「その時」を待つ姿。 これは、少し前にノルウェイの野外展で現地制作してきた作品と共通するものだ。 本物のダイナミックな自然のなかで、山々と呼応する「サナギのとき」Kunst i Nature 2013 in ノルウェイ。 対比して、発信//板橋2013では、私が実際に間近で観察したひそやかな生命の神秘を表そうと思う。 美術館の奥まった空間は、サナギのいる葉陰に分け入る構成にぴったりだ。 濃密な緑の空間をつくるため、展示空間サイズに合わせて布13,140cmを3晩縫いまくった。 緑の布に覆われてしまった自宅アトリエ…。
森の奥でひっそりと、生まれ変わるときを待つサナギを作ろうとしています。 サナギの体内で蝶になるためのミラクルな大改造が行なわれているようすが、微かに見えるように。 しかしー 美術館の私の空間は、我が家のアトリエの3倍以上ある。 7メートル近くあるサナギの全体像を家の中でつくることは不可能。 さて、どうしようか。 先月末、イタビに行ったときの、制作中の大矢りかさん。だいぶ、舟らしくなってきた。いい眺め。 イタビは周囲が緑地のため、ちょうど美術館そのものが森の中の隙間(ギャップ)のようになる。金沢寿美さんの作品が加わると、さらに美術館の建物が作品のように見えて来るはずです。
どうやってサナギの立体を準備するか迷ったあげく、体長の半分の設営をアトリエ内で実験してみることにする。 ※右の背景画像(アトリエで実験中)⇒ あれこれ物を移動して、なんとか空間をあけたものの、今後、開催まで、家の中を歩くには、くぐったり、またいだり、ずらしたり…を繰り返すことになるね。
板橋区立美術館の作品準備中。いよいよ家の中の移動が難しくなって来た… サナギの構造を試作中、1週間前の状態。 アトリエの長辺最大限までつかっても首から先は作れません…想像するだけ。 完成させてしまうと家から出せなくなるので、あくまで「お試し」までなのが辛いところ。
サナギの構造を試作中、数日前の状態。体内を透かし見るようにする予定。 家の中だとかなりオジャマムシだけど、美術館に置いたらささやかな生き物のはず。
葉羽 だんだん形を表して来た丸山芳子さんの作品。板橋区立美術館の現代美術企画展「発信//板橋」シリーズの第2回展『ギャップ ダイナミクス』が発表の場となります。
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