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その99

奥の億の記憶

 前号で中学時代のバレーボール大会の事を書いたが、重箱の隅の記憶が、済にならないでゾンビのように出現し思い出す事がある。

「♪小鹿のゾンビは可愛いな」なんて童謡を聞いたら動揺するが、同様のダジャレを以前にも書いたかもしれない。

「♪象さん、象さん、お鼻が長いのね、そうよ母さんも長いのよ」だが、鼻の下が長いのは父さん象で、子象が眼帯をすると「一つ目子象」になるのか。

「♪犬のおまわりさん、困ってしまって」だが、犬のおまわりさんも、捜査に困ったら警察犬を使うのか。

 殉死すると犬死なるが言葉使いには気を付けよう。

 奥の億の記憶だが、きっと消去された訳ではなく引き出せないだけだ。

 何かのきっかけで、回線がつながれば思い出す。

 前記のバレーボール大会だが、ゲームの最後に失敗すると「ラスト・ドジ」とか周りから言われてプレッシャーになった記憶がある。

 ラスト・ドジにはなりたくないので、がんばるしかないが、昭和青春はしばしば残酷で失敗者にはきびしい。

「腕白でもいい、たくましく育ってほしい」は昭和CМのキャッチフレーズで人生たくましく腕白はいいが、尿検査で「蛋白」はよくない。

 健康食品ブームになって久しいが、世田谷自然食品は世田谷区のネーミングライツを持ってはいないと思う。

 品川兄弟は品川に、阿佐ヶ谷姉妹は阿佐ヶ谷に住んでいるのか。

 学生の頃、高円寺や阿佐ヶ谷に多くの知人友人が生息していて、ぶらぶらしていると偶然というか必然というか、よく知人に遭遇した。

 時間にもよるが夕方であれば酒でも飲むしかない。

 仕事をやめて間もない頃、昔友人とよく行った高円寺の小さな居酒屋に久しぶりに行ってみた。

 当時はマスターが一人で店をやっていたが、親族らしい方も加わり店は繁盛していた。

 後日そのマスターも他界したと聞いたが店は、まだあるのだろうか。

 店のカウンター席で夢を語った親友ももういないが、あの席で待っていれば、ヒョイと隣に現れそうな気がする。

 酒代がないので友人のアパートから友人の親が買った岩波全集を持ち出し、二人でリヤカーで運んで古本屋に売り、酒代にした親不孝者同士だった。

 奥底の記憶が無意識に時々出現する。

 今更、人生の恥じを晒す必要もないが、重箱のスミやハジにある、恥じの記憶がシミだす。

「♪忘れてしまいことや、どうしようもない寂しさに包まれた時、男は酒を飲むのです」だが、記憶のアルコール漬は記憶の保存になってしまい心の奥底に深く沈殿して堆積される。

「♪一人、酒場で飲む酒は」だが、ロンドンにいた時、時々一人で場末のパブに行った。

 一人者同士の思わぬ出会いもあって日本人の仲間と行くより面白い事がある。

 ある時、アイルランド人のおじさんと、日本語訛りの英語とアイルランド訛りの英語で話す事があった。

 自分は日本人だと言ったら、「日本は英国と戦争したから偉い」と褒められた。

 ヨーロッパ列強はアジア、アフリカの有色人種の国を長く植民地にして虐げたが、英国は同じ白人の隣国アイルランドも100年以上植民地化していた。

 虐げられた記憶はDNAのように遺伝子で子孫に引き継がれ、今でも北アイルランドでは宗教も絡んでゴタゴタがおこる。

 ビールからウイスキーとガンガン飲んで、酔いつぶれた彼だが、彼の記憶の奥底の億の記憶の一つに私のこともあるのか。

 つーか、既にセンの風になってセントパトリックの元に旅立ってしまったかもしれない。

 私もやがて「♪千の風になって」だが、あの世でも凝りもせず「千の風に吹かれて」なんてブログで、この世の思い出を書いている悪い夢を見た。

 (2018.9.1)アンブレラあつし

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