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その144

紺碧の「空事」

 最近、何度も話題にしている古関裕而だが朝ドラで一回目からの再放送が始まった。

 また朝からテレビで福島弁が聞けて嬉しい。

 たまに聞き慣れない福島弁もあるが、「ほだ、言いがだ、しねべした」なんてテレビに話しかけながら楽しんでいる。

 今回の朝ドラは「エール」で応援という意味だ。

 古関裕而作曲の応援歌は数多くあるが、早稲田大学の応援歌「紺碧の空」も有名な曲の一つだ。

 番組の中でも取り上げていた。

 昔、約40年以上前になるが、M君と二人で飲み屋で「紺碧の空」の歌詞について語った事がある。

 M君は早稲田の文学部に入学したが、若くして亡くなった同期生だ。

「紺碧の空」の旋律は応援歌らしく軽快で、口ずさみたくなるが、歌詞
が「♪紺碧の空、仰ぐ日輪、光輝あまねき、伝統のもと・・・」と紺碧や日輪、光輝など漢語が多い。

 最後に「♪覇者、覇者、早稲田」と歌うのだが、日本語がプアな私は「覇者」を「発射」と勘違いしていた。

 ツーカ、「覇者」という語彙が私にはなかった。今ならネットですぐに歌詞が調べられるが、昔はそうもいかない。

「♪発射、発射、早稲田」って、どういう意味なんだと彼に聞いた。

「発射でなく覇者、覇権の覇に、者」と丁寧に教えてくれた彼だったが、今思うとマヌケな質問をした私だな。

 聞き違い、勘違いだが聞いておいてよかった。

 聞くは一時の恥、聞かずは一生の恥だが、高齢になると何度も同じ事を聞く事に羞恥心もなくなる。

 昭和も遠くなったが耳も遠くなったな。

 歌い出しの「紺碧の空・・・」を「あおぐ、七輪」にすると、秋空のもと、サンマを焼く昭和の風景だ。

 なんて呟く、受験で早稲田に落ちたボクです。

 初めから受かる訳がない記念受験というやつだが、早稲田中退はステイタスでも、早稲田不合格はステイタスにはならないス。

 私は国分寺、M君は国立に住んでいたこともあり、近所で何度か一緒に酒を飲んだ。

 M君のアパートの部屋には、難しそうな文学の本が並んでいて、いかにも文学青年というイメージだった。

 カーテンを閉め切った薄暗い部屋は、居るだけで気が滅入るので、部屋飲みはしないで駅近の居酒屋で酒を飲む。

 M君は酒を飲むと周りの者にからみ荒れると聞いていたが、私とはそうでもなかった。

 ただ、お互いに飲み出すと止まらなくなり、帰りの電車賃だけを残して深酒をした。

 しばらくして、M君が消息不明になっているとの噂が友人間に広まり、数ヶ月後、都内の河川で遺体になって発見された。

 事故か事件、自死なのかは原因は不明だったが、私達の同期で一番早く亡くなったのが彼で、恐らく24か25歳くらいだっと思う。

 福島の自宅で行われた葬儀に参列した。

 彼の母親から、東京で会っていた時のようすなど聞かれるが、終電になるまで深酒してましたなんて言えなかった。

 コップで酒をあおるように飲む彼の姿は、何か悩んでいるようにも思えたが、相談にのれるような人徳は私にはない。

「♪覇者、覇者」は早稲田で、「♪発射、発射」は北朝鮮、「♪発車、発車」は発車オーライで、人生、生きてるだけでオーライだが、早々人生に見切り発車をして天国に旅だったM君だ。

 石川さゆりの「津軽海峡冬景色」がいいと意外な事も言っていた彼だが、エンカは彼の応エンカには、ならなかったのか。

 古関裕而は他にも阪神や巨人の応援歌も作曲している。

 さらに多くの軍歌も作曲しており、彼の負の面と評価する人もいて、昭和を代表する作曲家としては、古賀政男や服部良一に格上感がある理由だ。

 しかし、あえて暴論覚悟で言えば、「軍歌」は日本が戦争に負けたから「悪い」のだ。戦勝国が軍歌を反省することはない。

 藤田嗣治の戦争画も日本が敗戦したから悪になる。

 特定の人を悪者にして「炎上」させる手口は昔からあり、他者攻撃は保身術のひとつだな。

 私自身も自分の事は棚にあげておいて、安易に他者攻撃することが、あるので自戒だが、自戒自戒と自戒に慣れて、ジカイのお楽しみになってしまう。

「戦意高揚」のための軍歌や戦争画と簡単にいうが、ひとつひとつ丁寧に聴いたり観たりすると、そう単純でもなく複雑で戦意高揚というより戦争の空しさ残酷さを感じる作品も多い。

 世の中は、時代時代で人を下げたり上げたりするが、古関裕而は確か国民栄誉賞を辞退している。

 マジな話になったが、紺碧の「空言」と聞き流してほしい。

 コロナもなかなか収束する気配がない中、天気を見ながら梅雨空のもと上京し上野で水絵を描いているが、私の絵も絵空事だ。

 (2020.7.4)アンブレラあつし

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