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その120

昭和ホーロー記

 前号のカルピスのホーロー看板が懐かしい。

 ホーロー看板だが、最近は資料館や昭和街並再現施設などで見ることはあるが、実際の街中で見ることはほとんどない。

 後継者がいなくて店じまいしたが、資金不足で取り壊しもできない商店の壁や、古い塀などにゾンビにように残されているホーロー看板を希に見ることがある。

 テレビなどの映像媒体が十分に発達していなかった頃、ホーロー看板はカラフルで華やかな広告媒体だった。

 ホーロー加工で色あせる事がなく、錆にくいので妙に長持ちする。

 当時の制作者も、まさかこんなに劣化しないとは想像しなかったに違いない。

 芸能界で言えば、由美かおるだが、なんと彼女は蚊取線香のホーロー看板になっていた。

 彼女は当時から既に体全体を看板のようにホーロー加工していたのか。

「♪ホーロー、ホーローになる時、それは今」なんていう歌はないが、このギャグ、誰もホローしてくれないな。

 甲斐バンドだが、ヒット曲に「♪安奈ー」なんて歌もアンナ。

 こんな、あんな、クダラナイ話題の文で、そのくだらなさに自分でも満足してしまうが、芥川賞は絶対無理。

 私は「上野のバンクシー」と紹介されたヒトなので、芸術表現活動をおろそかにしてはいけない。文章表現よりは絵画表現で勝負だ。

 ツーことで、久しぶりに上野に出動した。最近は天候不順で週末が雨のことが多い。

 曇りでも湿度や気温が高く短時間でも汗だくになる。過日は都美術館で絵画展の内覧会があり、水撒き活動のあと行ってみた。

 京都の放火事件の直後だったからか、美術館の正門ゲートで招待状をチェックされた。

 荷物チェックはなかったが、傘は傘立てに置くことや荷物はロッカーに入れることなど、いちいち丁寧に指示された。

 受付で会場への入場券代わりにシールを貰う。

 見える場所に貼るのだがシャッツが汗でびしょ濡れで貼れない。

 かといって手に持って提示するのも不自然なので帽子の正面に貼った。

 会場入り口で係員に帽子を指さしてシールを見せた。

 係員はじめやや驚いたようすだったが、その後は笑いをこらえている
ようにも思えた。

 自分としてはグッドアイデアだと思ったが、周りから見るとかなりヘンなのか。

 などと自問しつつ、絵は難しいのでサッと見てレセプション会場に向かった。

 ここでもシールを貼った帽子を見せて会場に入る。上野精養軒が経営する美術館食堂の料理なので、高級感がある食べ物が並ぶ。

 ビーフシチューが旨すぎて3回もオカワリする。シャンパンは飲み過ぎると帰れなくなるので一杯だけにし、オレンジジュースをオカワリする。

 帽子を被ったまま、ほぼ夕食分いろいろ食べて会場をあとにした。

 帽子をずっと被っていれば、帽子を忘れることはないが、これがホントの「忘れ物ボウシ」なんちゃって。

 安ホテルにチェックインし、荷物をおろし帽子をとったが、なんとシールが貼りっぱなしだった。

 うっかりしていたのだが、ホテル従業員にも見られたな。

 人にどう思われようと高齢者の王道をホーローする私だが、現在三つ持っている帽子の他に「ぼけボウシ」も必要なボクです。

 (2019.7.27)アンブレラあつし

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