小さい子どもは純真である。
そんな子ども相手にうそをつく。まず蛇の絵を描く。
そして、この蛇は毒蛇で、これからマジナイをかけると本物の蛇になり近くの人に飛びかかると言う。
前回も近くにいた子が逃げ遅れて噛まれ病院に運ばれたなどと大嘘をつく。大人は後ろで笑っているが前にいる子どもの顔は真剣になっている。
マジナイをかけたら、すぐに逃げられるように準備しておけと脅す。
「あだぶら かだぶら アンブレラ 本物の蛇になれ」と思いつきの呪文を叫び水をかける。
そして臨場感を高めるために後方に飛びのく。子どももひるみ同じように後ずさりする。恐怖と緊張の瞬間だ。非日常の快感だ。
ところが目の前の 蛇の絵は相変わらず絵のままだ。子どもが一斉に私の方をみる。その瞳は真剣だ。
今日はマジナイに間違いがあって失敗したと、さらにこどもだましの大嘘をつく。 大人は笑っているが子どもは今ひとつ納得がいかないようだ。
あだぶらかだぶらなんだっけなと一人つぶやき次まで調べておくという。
今日はおしまいと終了をつげるが一人の男の子が近づいてきて「この次は間違わないでね」と真剣な表情 で念をおされた。
子ども相手に嘘をついた罪悪感が頭をよぎる。
この傘が魔法の傘ならと思う。
メリーポピンズのように傘をもって空をとびたい。
雲に乗りたい。 黛じゅんの歌が聞こえてきたが空耳にちがいない。
王様の耳はロバの耳、王様の耳はパンの耳、王様の耳は日吉ミミなどと言霊が飛び交うのは歳のせいなのか。
それとも私の頭の言語中枢が暑さでさらにマヒしたのか。おしまひだ。
(2015.9.8)アンブレラあつし |