私の専門は有機合成化学で、一般の人には馴染みがない人名反応を結構知っている、なんてことを書いたことがあります(雑感 273)。
高校の理系の教科書にはピタゴラスの定理(数学)、フレミングの法則(物理)、ボイル・シャルルの法則、アボガドロ定数(化学)などが載っていて、科学界で人名が冠されることは珍しくはありませんが、有機化学の人名反応はそれを専門にした人くらいしか知らないと思います。
ロバート・ボイル(左)とジャック・シャルル(右)
先日読んだ「5分で泣ける!胸がいっぱいになる物語」(宝島社文庫)の中の1編、喜多喜久著「父のスピーチ」には次のような記述がありました。
「・・・鈴木カップリング(筆者注:鈴木章、北大名誉教授、ノーベル化学賞受賞)、根岸カップリング(同:根岸英一、パデュー大学元特別教授、ノーベル化学賞受賞)、光延反応(同:光延旺洋(みつのぶ おうよう)、青学大元教授)・・・これらは全て日本人の名前が付いた化学反応である。有機化学で使われる反応には、その反応を開発した研究者の名前が付いているものが多い・・・」。
「5分で泣ける!胸がいっぱいになる物語」
人名反応というワードがストーリー構成上重要な役割を果たしていました。
有機人名反応
勿論、化学の知識がなくても問題なく読み進められます。ちょっと調べてみますと、著者は薬学部出身で有機化学の知識もあるのですね。
医学者が登場する小説は山崎豊子の「白い巨塔」をはじめ結構読んでいますし、東野圭吾のガリレオシリーズの主人公は物理学者です。
そのシリーズの1つで直木賞受賞作「容疑者Xの貢献」には数学者が出てきます。
劇場映画版より
小説で化学者に出会うことはないかと思っていましたが、かつて化学者の端くれに名を連ねた私としましては、「これ、俺の専門分野」と誰かにささやきたくなりました。
ツーさん【2025.4.7掲載】
葉羽 「人名が付けられる」ので有名なのは天体かな。小惑星で「庵野秀明(1994年発見)」、「仮面ライダー(1995年発見)」、「寅さん(2000年発見)」なんてのもある。星が存在する限りその名で呼ばれるんだから凄いと思う(笑)