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 その26 誰かの代わりに 

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鞍馬 だいぶ前のことですが、タレントの方が代理母に生んでもらった子どもの出生届の受理を指示する判決が高等裁判所で出されたり、ある女性の代理母にその女性の実の母親がなったりという出来事が報道されましたね。

■ 何が代理出産と女性の社会進出の関係

先日の読売新聞で、代理母に関する議論が進んでいるという記事があったので、そんなことを思い出しました。

その後自民党の総裁選や某国の核実験とか(これすら忘れてますか?)学校のもろもろの不祥事などでマスコミ的にはもうどうでもよくなってしまっているような気がしますが、私は代理出産には大いに賛成です。

必要な法整備ができたらば、やりたい人はどんどんやればいいとすら思っています。

理由は簡単です、男女の平等な社会進出と、少子化を同時に解決しようとするとどうしても突き当たる、「夫婦のうち子どもを生むことができるのは妻だけである」という問題が解決できるからです。

私は中学生ぐらいのときから、女性が男性と同じように社会進出をして、働き続けるためには、人工子宮を作る必要があると考えていました。

最近はそれに加えて、専業主夫を受け入れる文化を定着させる必要があるとも考えています。

そうすれば女性は、妊娠・出産という、職業人としての女性のみに起こるキャリアの空白からほぼ完全に開放されて、この空白から生まれる雇用者側から見た「女性に仕事を任せることのリスク」が解消されると考えています。

その結果、女性も男性と同じく、より能力を中心とした評価がなされやすくなるはずです。

人工子宮ができる目処はたっていませんが、代理出産を認めることで、それがあるのと同じような状況を作り出すことができます。

つまり、キャリアを優先する女性が、代理母に子どもを産ませ、子どもが手を離れるまで夫が家事と育児に専念するというライフスタイルもありなのではないかということです。

 

■ 何が自然か?

一方で、代理出産を許可するためには、解決しなければならないさまざまな問題があります。

学会ではいろんな点が指摘されているようですが、その中には、あまり納得のいかないものも含まれています。

たとえば、お金のある人は代理母を使って子どもを持てるけれど、普通の人はそうは行かないとか出産には命の危険が伴うので、それを代理させるのはよくないといったようなことです。

前者は、お金持ちはベンツのような高級車に乗れるけれど、普通の人は国産車にしか載れないので不公平だとか、もっと近い例だと、お金持ちは高額の、保険の利かない高度な治療を受けて生きながらえるけれど、普通の人は難病にかかったらば死を待つのみなので不公平だといっているのに似ています。

冷たい言い方ですが、生まれつきなのか後天的なものなのかはわかりませんが、子どもを持とうと思う年齢になって、実は子どもが産めない・作れない体だったとわかった人は、子どもを持てないのが自然な形であって、そこを無理してわざわざ乗り越えようとするのは贅沢な望みであることを忘れてはいけません。

少子化を解消したいという政策と方向が一致しているからといって、普通分娩のように30万ぐらいで代理出産ができるようにするとか、そこまで行かなくても、公平感が出るようにしようというのは、権利を主張しすぎです。

そもそも所得の格差によって、市場から得られるサービスの質や量に差があるのは当然のことです。

 

■ 出産は危険か?

それから、後者の、出産には危険が伴うという意見にも納得できません。

厚生労働省の発表によると、日本における妊娠を原因とする死亡の率は平成15年で10万人に対して6.3人となっています。

たとえばこれを、自動車運転者・同乗者の死亡率と比べてみます。

平成17年の自動車運転者・同乗者の、交通事故による死亡者数は警察庁の発表によると運転免許の保有者78,799,000人に対して2,121人ですので、10万人に対して約4.9人ということになります。

これはどういうことかというと、誰かに運転を代わってもらった時にその人が死亡する確率と、誰かに出産を頼んだときにその人が死亡する確率は大して変わらないということです。

人が運転する車に乗るとき、「あぁ、俺今日交通事故で死ぬかも。」と思っていますか?(私はたまに思いますが・・。)

妊娠・出産がとても大変で、体調を崩したり、文字通り体を傷めたりすることはもちろん良くわかっていますが、そんなに危険な行為なのかと疑問に思ってしまいます。

 

■ 親子関係を認めていないのは国だけ

学会などの議論のうち、反論できそうなものをあげてみましたが、実際はこんなこと以外に解決しなければならない複雑な問題もたくさんあって、議論は思うように進んでいないようです。

私が知らないだけで、現時点では解決不可能な決定的な問題も中にはあるのかもしれません。

国も学会の合意なしに独断で法律は作れないでしょうし、代理出産が社会的に認められるようになるためには長い年月がかかることでしょう。

なので、ついでに言うと、冒頭のタレントさんたちは、最高裁では敗訴すると思っています。

なぜなら、私は法律の専門家ではないのでよくわかりませんが、最高裁判所は法解釈についてとても保守的なところであると聞いているからです。

そのため、誰から生まれてきたかを判断基準とするこれまでの民法の解釈をいきなり曲げるような画期的な判決を最高裁判所が出す可能性が非常に低いと考えています。

もっと言うと、私が彼女たちの立場だったらば、戸籍上実の親になれるかどうかなんで、どっちでもいいことだとあっさり切り捨てると思います。

なぜなら、親子関係を認めていないのは国だけ、ほんの紙切れ一枚、システム上のデータにして数バイトに過ぎないからです。

国がなんと言おうと血がつながってるんでしょう?二人の遺伝子しか引き継いでないんでしょう?そして何より、愛してるんでしょう?それだけわかっていれば十分だと、私だったら、そういう言葉を妻にかけてあげたいです。

鞍馬【2020.2.25 リニューアル・アップ】

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