【日々回顧館だより】#020〜暴走する国
昨年、たまたま映画館で韓国映画『기생충/Parasite(パラサイト 半地下の家族)』を見終わった直後、館のスタッフが「たった今、この映画が米アカデミー賞で作品賞など最多4部門の受賞が決定しました」と興奮した面持ちで客に報告していた。
今年は一昨日、1991年のアカデミー賞作品賞など最多4部門を受賞した『The Silence of the Lambs(羊たちの沈黙)』の続編『Hannibal(ハンニバル)』(2001)のDVDを自宅で見た。
昨日になって、この映画で、前作で収容された精神病院から脱獄したハンニバル・レクター博士役を演じたSir Anthony Hopkins(アンソニー・ホプキンス, 1937-)が、昨年公開の英仏合作映画『The Father(ファーザー)』での演技が評価され、主演男優賞に輝いたとのニュースが流れた。
2年続けてなんというタイミングの良さかと驚いた。
ところで、今回のアカデミー賞で、21世紀の路上のサバイバーたちを描き、作品賞・監督賞・主演女優賞に輝いたのが、ロードムービー『Nomadland(ノマドランド)』。ノマドとは遊牧民の意で車上生活者(ハウスレス)を表すそうだ。
『ノマドランド』は既に第77回ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞、第78回ゴールデン・グローブ賞ドラマ作品賞を受賞しており、『パラサイト 半地下の家族』が第72回カンヌ国際映画祭パルム・ドール、第40回韓国青龍映画賞作品賞等を受賞後に第92回アカデミー賞作品賞を受賞したのと同様の流れで受賞したことになり、順当な受賞と言える。
監督賞に輝いたのは、中国出身(中国籍)の女性、クロエ・ジャオ(趙婷/Chloé Zhao, 1982-)監督。
昨年『パラサイト 半地下の家族』で監督賞を受賞した봉준호(ポン・ジュノ, 1969-)監督に続き、アジアにルーツを持つ監督が2年連続の受賞となったことは、白人中心主義を批判される最近のアカデミーの雰囲気、会員構成の変化からして当然と言えば当然か。
ただ、大きな問題が発生した。過去に中国批判に当たる発言があったとして中国のメディアやソーシャルメディアではこの情報が完全に遮断されているという。
香港や新疆ウイグル族弾圧など、最近の中国は民主主義に逆行する圧政が続いているが、これもその一環か。
中国人の友人はたくさんおり、皆いい人ばかりなのだが、政治は別で、ある種「第二次文化大革命」が進行しているとしか思えず、怒りを覚える。
習近平の神格化、中華思想に基づく覇権志向は極めて憂慮される。
先週は黒澤明監督の『隠し砦の三悪人」(1958)を観たが、私に言わせれば、『近代中国の三悪人』は毛沢東、江沢民、習近平だ。
※主演女優賞は『Three Billboards Outside Ebbing, Missouri(スリー・ビルボード)』(2017)でもアカデミー賞主演女優賞を受賞したFrances McDormand(フランシス・マクドーマンド, 1957-)。
https://www.afpbb.com/articles/-/3344072
◉ 『ノマドランド』予告編
https://www.youtube.com/watch?v=89a0cFJypww
毒舌亭(2021.4.28up) |