【日々回顧館だより】#011 夢で逢えたらいいな
1983年の第36回カンヌ国際映画祭。
日本からの出品作では、デヴィッド・ボウイや坂本龍一、ビートたけしらが出演した大島渚監督作品の『戦場のメリークリスマス』がグランプリ最有力と言われるほど下馬評が高かったが、まったく期待されていなかった巨匠・今村昌平監督作品の『楢山節考』が大逆転でパルム・ドールを受賞した(同年の日本アカデミー賞作品賞も受賞)。
『楢山節考』は、深沢七郎(1960年に中央公論に掲載された『風流夢譚』で右翼テロ事件に逢っている)の同名小説の映画化作品(私もDVDを持っている。他に1958年木下恵介監督による同名作品もあり)。
主演は緒形拳、その母に坂本スミ子、脇役に左とん平、あき竹城、清川虹子、殿山泰司、常田富士男、倍賞美津子らがいた。
気候にも耕地にも恵まれない過酷な寒村の環境の中で、住人が70歳ぐらいになると、高齢の年寄りをその家の長男などが背負子(しょいこ)を用いて一人で担いで連れて行き楢山に置いてくるという風習「楢山参り」をテーマにして描いた重い映画だ。
この映画で実年齢を30も上回る70代の老女役を演じた坂本スミ子は前歯を4本削り、歯のない役作りをしたという。
カンヌでは、受賞を全く想定していなかった今村監督が不参加のため、坂本スミ子がソフィー・マルソーにエスコートされ、オーソン・ウェルズとソフィア・ローレンから賞を貰ったという。
坂本スミ子はもともとは歌手。私的にはNHK『夢で逢いましょう』で主題歌を歌う彼女の記憶が鮮烈に残っている。
歌手・女優の坂本スミ子さんが先ほど(1/23)死去。享年84歳、R.I.P.
🎥 楢山節考(予告編)
https://www.youtube.com/watch?v=Lw08P2VDdgM
♬ 夢であいましょう / 坂本スミ子
https://www.youtube.com/watch?v=MaB5ffM_R40
毒舌亭(2021.1.27up) |