【常緑音楽館便り】#1248~「新日本紀行」テーマ曲
3年前に他界したが、かつて富田勲という作曲家、編曲家、シンセサイザー・アーティストがいた。
NHKや民放のラジオ番組、大河ドラマ(花の生涯、天と地と、徳川家康等)などのテレビ番組、映画、虫プロダクション関連のアニメーション等々の音楽を膨大な数、担当したほか、特に電子楽器モーグ・シンセサイザー音楽の世界的先駆者で、その音楽や音響効果は「TOMITA SOUND」と呼ばれ広く世界に知られた。
1974年のデビュー作『Snowflakes Are Dancing』(邦題『月の光』)は世界的なベストセラーとなった力作で、今日なお光り輝いている。
彼が作曲した曲の一つに、NHK総合テレビ「新日本紀行」のテーマ曲がある。
「新日本紀行」は、昭和38年から57年までの18年間続いた日本で初めての本格的な紀行番組で、制作本数は800本近くに上り、今でもたびたび再放送される。
当初は全国各地を訪ね自然と風土、行事、風習などを紹介する番組だったが、昭和44年頃から、地域に根ざして生きる人々の姿を描く「紀行ドキュメンタリー」のスタイルを確立していったと言われる。
音楽は、大友直人指揮東京交響楽団(チェロ奏者の我が義息も現在ここに所属)の演奏(1994年)による。
冒頭の映像とともにホルンの咆哮で始まり、刻(とき)を刻む拍子木、意思を込めた低弦の響き、木管の移ろいゆくなか、悲哀と希望が明滅しながら音楽が進む。
まさに戦後昭和の時代の日本を象徴的に表現した音楽と言えるだろう。
Evergreen Music通算1248曲目。
♬ 新日本紀行テーマ/大友直人指揮東京交響楽団
https://www.youtube.com/watch?v=YoMRp3P8d_g
毒舌亭(2019.12.18up) |