【常緑音楽館だより】#1424〜虹と共に消えた恋
20年以上も前のことだが、私もあの「9.11」の直前に行ったことがあるワシントンD.C.のNational Mall(ナショナル・モール)。
ここは、ワシントン記念塔、リンカーン記念堂、アメリカ合衆国議会議事堂などが立地する国立公園だ。
ここで1963年、人種差別撤廃とすべての米国民に平等な公民権を保証する法律の可決を求める「ワシントン大行進」が展開された。
このデモの集会では、「I Have a Dream(私には夢がある)」で有名なMartin Luther King Jr.(マーティン・ルーサー・キング, 1929-1968)牧師の演説が行われ、また、メイン・イベントの前座として、Bob Dylan(ボブ・ディラン, 1941-)、Joan Baez(ジョーン・バエズ, 1941-)、Mahalia Jackson(マヘリア・ジャクソン, 1911-1972)、そしてPeter, Paul & Mary(ピーター・ポール&マリー / PPM)らがベトナム反戦のプロテストソングを熱唱した。
ディランが歌ったのは『The Times They Are A-Changin’(時代は変わる)』、『When The Ship Comes In(船が入ってくるとき)』 、『Only A Pawn In Their Games(ゲームの駒に過ぎない)』の3曲、バエズが歌ったのは『Oh Freedom』と『We Shall Overcome(勝利を我らに)』の2曲、マヘリアが歌ったのは『How I Got Over』と『I’ve Been ‘Buked, And I’ve Been Scorned』の2曲、そしてPPMが歌ったのは『If I Had a Hammer (The Hammer Song)(天使のハンマー)』と『Blowin' In The Wind(風に吹かれて)』の2曲だった。

そのPPMのメンバーの一人、Peter Yarrow(ピーター・ヤーロウ, 1938-2025)さんが1月7日に死去したと報じられた。享年86歳、R.I.P.。
あれは1960年代後半だったか、私はPPMの来日公演が東京の日比谷公会堂で開かれるというので聴きに行った。
ステージ終了後、日比谷公園にひょいと姿を現したピーターとポール(ノエル・ポール・ストゥーキー / Noel "Paul" Stookey, 1937-)の二人と握手し、サインをもらい、二言、三言、会津弁の英語で言葉を交わした思い出がある。
残念ながらマリー(Mary Travers / マリー・トラヴァース, 1936-2009)とは会えなかった。彼女は2009年に他界しているから、ピーターの死去で残るはポール一人となった。
ポールは、北朝鮮による拉致被害者横田めぐみさんのための『Song For Megumi』を2007年に発表したが、ピーターのほうは余り消息は伝えられなかった。死去は残念だ。
Evergreen Music通算1424曲目は、そのPPMの代表曲の一つ、『虹と共に消えた恋』。1962年。静かな反戦歌である。
♬ Gone The Rainbow / Peter, Paul & Mary
https://www.youtube.com/watch?v=WEW8Kt10tU0
毒舌亭(2025.1.15up)
    
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