【 瘋癲は明日放送 】 「男はつらいよ」シリーズ第3作。
通常『男はつらいよ フーテンの寅』と表示されますが、正式なタイトルバックは『続続 男はつらいよ フーテンの寅』。
公開は「人類の進歩と調和」をテーマとした大阪万博開催の年、昭和45(1970)年。
「人類の進歩と調和」なんて、今日の現実世界を見渡すと「薄れ去った希望」みたいに思いますがね。
「男はつらいよ」シリーズは、全部山田洋次監督作品と誤解している方も多いと思いますが、この第3作は森崎東監督、第4作(『新・男はつらいよ』1970)は、テレビ作品の演出にも携わった小林俊一監督作品です。
とはいえ、この3人は、監督か脚本で「寅さん」にいずれにせよ共に関わっているのだから世話はありませんが。
第3作は、格差社会での一番底辺にいる香具師の寅さんの世界をちゃんと描いてみようと、車寅次郎の旅先の孤独を見事に描いた一本として、森崎東監督の意図する世界が実現した異色作になっています。
マドンナは新珠三千代(1930-2001)さん。旅館の女将・志津役で出演しています。新珠さんの当時の所属は東宝。
「五社協定」(日本の大手映画会社5社が締結した専属監督・俳優らに関する協定(1953-1973))が所属する監督・俳優の自由な活動を縛う強烈な締め付け役となっていた中で、よくも他社(松竹)作品に出演できたなと感心したことを今でも覚えています。
和服が似合う清楚高潔な「伝統的な日本女性」としてのイメージをここでも保っていました。
いろんな作品に出演しましたが、私にはクリスチャン作家・故三浦綾子さんの小説『氷点』のテレビドラマ(1966)で主人公の辻口陽子(内藤洋子演)の養母役が懐かしい。
それから旅館の女中(ジェンダーフリーが叫ばれる今では差別語・死語)役に悠木千帆さんが出演しています。
悠木さんは2004年にチャリティー・オークションでこの芸名を出品し、ある女優に無償で譲与しています。
この悠木さんこそ、何を隠そう、その後の樹木希林さん(1943-2018)です。
それから、寅のお見合い相手の女中(同前)役に春川ますみ(1935-)さんが出演。
東映映画「トラック野郎シリーズ」のほとんどにも出演していました。
最近はとんとお見かけしませんが、この人も懐かしい女優さんです。
『続続 男はつらいよ フーテンの寅』は4Kデジタル修復版で明日23日(土)18:30〜BSテレ東にて放映されます。お暇な方はご覧あれ。
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🎥 続続 男はつらいよ フーテンの寅 / 4Kデジタル修復版予告編
https://www.youtube.com/watch?v=4WCE7rqUEQw&t=8s
ああ、それから、渥美清さんの転移性肺癌による死去で実現しなかった映画が2本あったことを知っていますか。
幻の第49作は『男はつらいよ 寅次郎花へんろ』。
マドンナは田中裕子さん。その兄役に西田敏行さんの予定でした。
実現すれば2大国民的映画(『男はつらいよ』『釣りバカ日誌』)のヒーローが同じスクリーンに登場したのに残念です。
画像は、ある方が制作した幻のポスターです。
また、幻の第50作はタイトル未定。マドンナは黒柳徹子さんの予定だったそうです。
それにしても、渥美清さんが国民栄誉賞を、山田洋次監督が文化勲章を受賞(受章)したことなんて、今の若い人は知らないだろうなあ。
毒舌亭(2021.10.27up) |